心の科学で平和を ダライラマ高野山で講演

会場の質問者に語り掛けるダライ・ラマ14世㊧

チベット仏教の最高指導者でノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世(81)が14、15日、高野山を訪れ、「21世紀における仏教徒の使命」と題する講演などを行い、平和な世界の構築に向けて仏教と近代科学が手を取り合うことの重要性などを話した。

ダライ・ラマ14世は1959年、中国によるチベット領有をもたらしたチベット動乱によりインドへ亡命し、臨時政府を組織。世界各地で平和の大切さを訴える行動を続け、1989年にノーベル平和賞を受賞した。

今回は高野山大学(藤田光寛学長)創立130周年記念事業への出席のための高野山訪問で、平成26年4月以来、4回目。14日は宗教儀式「不動明王の許可(こか)灌頂」を行い、15日は同大松下講堂黎明館で、約500人を前に記念講演した。

講演は英語で行われ、前半は会場との質疑応答となった。来場者からは「大切な人を失った時、どう気持ちを整理したら良いか」や「来日して大変なことが多いが、どう乗り越えれば良いか」などの質問が寄せられた。

質問に対して、ダライ・ラマ14世は「死を特別なことだと考えずに、人生の一部と捉えることが重要。私も愛する家庭教師の先生を失った時は嘆き悲しんだが、先生の教えを社会で実践しようと考え、気持ちを切り替えた」と自らの体験を紹介。異国での苦労については「国や地域、家庭にこだわると苦しくなる。人間を分け隔てる考えは時代遅れで、地球の人々はみんな兄弟姉妹と考えれば良い」とアドバイス。国際化が急速に進む現代において、広い視野で全体を見渡す姿勢や中立的な見方が重要と強調した。

講演の後半では、近代科学と仏教の関係を語った。自身の考えに大きな影響を与えたナーランダー僧院(インド)の教えについて、「ブッダの教えをそのまま信じるのではなく、知性に基づいた分析の重要性を教わった。確かな根拠を基に論じる姿勢は近代科学と共通する」と説明。宇宙に関する仏典の記述には誤りもあると述べ、脳が人間の心や意識に与える影響について仏教は多くの知見を持っていると話した。

同僧院では近年、近代科学を学ぶ講座が設置されており、当初は疑問視する声もあったが、人気を集めているという。

物理学や心理学については、古代インドの哲学者らが西洋より古くから深い考察に基づく独自の理論を生み出していたと指摘し、社会の問題を生む源とする「煩悩」を滅ぼすためにも、心の科学を突き詰めることが重要と強調。平和な世界の実現に向け、「仏の教えを唱えるだけでは不十分で、近代科学と仏教が手を取り合い、心の科学を発展させることが大切」と述べた。

インドでダライ・ラマ14世から教えを受けたという、大阪府四條畷市の近本須美子さんは「世界の人を国や民族などで区別せず、分け隔てなく接することの重要性を再認識することができました」と話していた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。