知の巨人の魅力発信 熊楠記念館の谷脇館長

田辺湾を望む屋上で谷脇館長

「地球が丸いことがよく分かるでしょう」――。19日に白浜町にオープンする「南方熊楠記念館」新館。田辺湾がパノラマ状に見渡せる展望デッキで、谷脇幹雄館長(65)はほほ笑んだ。同館は国立公園に指定された番所山の高台にあり、谷脇館長は「海と山が一体となったこの場所は、歴史や文化、環境学習の場として最高。ぜひたくさんの子どもたちに訪れてほしい」と願っている。
谷脇館長は和歌山市生まれで、熊楠が通った雄湊小学校、和歌山中学校(現桐蔭高校)出身。小学校5年生の頃に熊楠の代表的な著作『十二支考』を目にして以来、55年年来の大の熊楠ファン。その博識ぶりに衝撃を受け、卒業文集には「民俗学者になりたい」と書いたほど。
「熊楠の語り部として、できる限りのことはしていきたい」と話し、同館では希望すれば谷脇館長の展示解説も聞ける。「和歌山市の人にも、もっと熊楠を知ってほしいですね。熊楠が生まれた和歌山市は、当時は全国でも8番目の大都市。熊楠は、いわゆるシティーボーイだったゆえに、熊野の大自然に大きな魅力を感じたんでしょう」と熱く語る。
52年前に開館した熊楠記念館は、熊楠の娘婿である岡本清造氏の思いのもと、寄付金で建てられた施設でもある。「民の力でできた施設で、ここにも熊楠の在野の学者たるゆえんがあるように思います」。
完成した新館の一番の魅力は、屋上からの眺望。眼下の景色を眺めながら、熊野で育まれた歴史や文化を聞くのもまた一興。番所山の自然公園の遊歩道には、熊楠の『十二支考』にちなみ、田辺市龍神村のチェーンソーアーティスト、城所(きどころ)ケイジさんの十二支の木彫り作品も点在する。
新館のオープンに関し唯一心残りなのは、設計を手掛けた建築家の小嶋一浩さんが昨年10月、建物の完成を目前に57歳で急逝したこと。小嶋さんは日本建築学会賞、村野藤吾賞など多数の受賞歴があり、新館が遺作となってしまった
熊楠の生誕150周年という節目での開館には大きな期待を寄せ「世界的に情報発信できる人物で、国際性やエコロジー思想の観点からも、今こそ熊楠が注目されるとき。この素晴らしい番所山の力を借り、熊楠の魅力を国内外に発信していきたい」と話している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。

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