受刑者と向き合い20年 教誨師の高木住職

阿弥陀寺本堂で高木住職

多様な情報があふれ、物質的には豊かながら、犯罪や社会問題が絶えず混迷する現代社会にあって、人間の幸福を再考し、人生を見つめ直す機会をつくろうと、西山浄土宗阿弥陀寺(和歌山市田屋)の高木歓恒住職(67)は、さまざまな場所で法話を続けている。和歌山刑務所内で受刑者と向き合い、法話をする教誨師(きょうかいし)の活動は20年目を迎えた。
更生の一助となる教誨法話は、受刑者の信仰の自由を保障した上で、聞くことを求める人に対して行われる。県教誨師会の会長も務める高木住職は、受刑者の心の中にある社会とのずれを、一般的な常識や宗教心の向上に関する話を通して正していく。
高木住職は「宗教で最も大切なのは御利益だが、祈りや信仰で願望がかなうのが御利益ではありません。変えることのできないものを変えるという意味で、恨みやねたみしかなかった自分の心に感謝の心が起こるのが本当の意味での御利益です」と話す。
受刑者にはさまざまな状況があり、親のネグレクト(育児放棄)などにより情操の養育が十分になされないまま成長した人もいる。そうした場合にも高木住職は、「親を恨んでも前に進まないので、自分の手で悪い縁を断ち切ることが大切です」と力を込め、「犯してしまった罪は許せないが、そうせざるを得ない何ものかが働いてきたのが、彼女たちが背負ってきた人生なのです」と話す。
犯罪と更生を巡る情勢の変化も感じている。「バブルがはじけた」といわれる約20年前の経済の混乱期には受刑者の数が急増し、和歌山刑務所も収容人数が定員500人を上回る過密な状況が続いてきたが、昨年にはようやく定員を下回る状況まで落ち着いてきたという。
教誨師としての活動の他、高木住職は京都西山短期大学で非常勤講師として教壇に立っている。阿弥陀寺では1カ月に1回、「阿弥陀寺だより」を発行し、檀家との交流や仏典「法句経」の分かりやすい解説などを記している。ことしの1月号では、奈良少年刑務所へ視察に出掛けた際のエピソードをつづった。
「信仰で不幸になる人もいるのは本当の御利益を頂いていないから。どこまでも自身の心を見つめることが必要です」と話す高木住職。今後も教誨師の活動、大学での講義、各地での法話活動に精力的に取り組む。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。