駿河屋の菓子木型が一堂に 市立博で特別展

和歌の浦の風景を表した木型も

紀州藩の菓子御用を引き受けた老舗和菓子店の駿河屋が、江戸時代後期に使っていた菓子の木型を紹介する特別展「美尽し善極める―駿河屋の菓子木型」が8月27日まで、和歌山市立博物館(湊本町)で開かれている。ほとんどが初公開で、木型や菓子の見本帳の絵手本など約250点を一堂に展示。同館の山下奈津子学芸員は「木型を通して、和菓子という日本の文化や職人の技術を感じてもらえたら。美しく精巧な彫りは見るだけでも楽しいはず」と呼び掛けている。

初代・徳川頼宣が駿河屋の菓子の味を好んだことから関係が始まり、10代藩主・治宝の時代、和歌浦の風景や文芸作品が施された落雁(らくがん)は「美尽し善極めたる前後無比の良品」とされ、藩主の贈答品として用いられていたという。これら多くの文化的価値の高い資料が今後散逸することのないようにと、木型は平成27年から同館で保管されている。

木型は羽子板状や2枚組のものなど、大きさも形もさまざま。ハマグリや桜、桃や鳳凰など、さまざまな意匠がかたどられ、尾張徳川家から贈られた品を模して作られた豪華なイセエビやタイの木型なども並ぶ。

このうち、緻密な「紀八景」は、歌に詠まれた和歌浦の風景を、本に見立てて落雁にするために作られたもの。また、3枚一組の「和歌の浦」は、妹背山を中心に、片男波や三断橋などが丁寧に彫り込まれている。今回、総本家駿河屋協力のもと、この木型を基に落雁を制作。鮮やかな色彩と見事な立体感で再現、展示されている。

菓子形師の嶋作兵衛による代々の木型も並び、江戸から明治にかけての変遷も見て取れる。

開催に先立って関係者による内覧会も開かれ、原一起市教育長や総本家駿河屋の岡本良太社長も出席。山下学芸員が展示資料を解説した。
訪れた同市中之島の山田淳子さん(53)は「木型一つから時代の流れが分かり、これほど貴重なものが残されていたことは素晴らしいです。江戸と明治では彫りの繊細さに違いがあり、職人の技術が受け継がれにくいのかなと思います」と見入っていた。

岡本社長は「このような形で木型が展示されるのは大変ありがたいこと。歴史を引き継ぐ重みをかみ締めています。和歌山のさまざまな歴史が集約され、文化の一部が垣間見られるのではないでしょうか」と話していた。

8月20日には呈茶があり、総本家駿河屋の生姜ようかんも特別に提供される。茶券300円。また同館で特別講演会も開催。29日は和歌山大学南紀熊野サテライト客員教授の鈴木裕範さんの「和菓子のなかの紀州の風景」、8月5日には岡山空襲展示室の猪原千恵学芸員による「駿河屋伝来資料から読みとれること―紀州の殿様と尾張の殿様の交流」、同19日には山下学芸員の「駿河屋の菓子木型と和歌山」がある。

展示解説は8月6日、23日のいずれも午後2時から。問い合わせは同館(℡073・423・0003)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。