電卓「名人」育成 珠算塾主宰の江川さん

江川さん㊧と愛弟子の西春香さん

和歌山県和歌山市松江北で38年にわたり江川珠算塾を主宰している江川正博さん(67)は、そろばん、暗算、電卓の技能をバランスよく修得することを目指した適確な指導で、優秀な人材を数多く輩出している。平成12年にはICA国際電卓協会和歌山支部を発足させ、支部長に就任。電卓の段位合格者70人以上を育て上げている。

電卓の段位検定は、日本電卓技能検定協会と八王子商工会議所がそれぞれ実施。初段から十段まで二段ごとに正士、速士、正速士、教士、範士と呼ばれ、五つの称号全てを取得した人は、電卓の奥義を究めた「電卓士」の称号で呼ばれる。さらに範士の上に位置する称号に「名人位」がある。

検定試験では電卓の計算、メモリー、訂正キーなどのさまざまな機能を効率よく使いこなす技能が問われ、電卓士は、集中力・忍耐力・継続力・目的達成力を学び、これらの能力で社会に貢献し得る者に与えられる称号とされている。

昭和54年に珠算塾を開き、塾生を指導してきた江川さんは、同和歌山支部を発足させた当時は「珠算塾がなぜ電卓に取り組むのか」と疑問視する声もあったと振り返る。

江川さんは会計事務所で約10年間勤務した頃、そろばんと電卓を併用し「足し算、引き算はそろばんの方が早いが、掛け算、割り算は電卓を使用した方が効率が良い」と感じていた。「そろばん、暗算、電卓を使い分けて正確に早く計算することが最も大切。塾生にはその三つの技能を身に付け武器にしてほしい」との思いだった。

江川さんが育てた「名人」の一人が西春香さん(29)。双子の弟の正人さん、永人さんも共に名人位を取得し、「西3きょうだい」として電卓界にその名を知られている。

春香さんは10歳で入塾し、11歳から電卓の技能を学び始め、現在はパナソニック㈱の珠算部に所属し、腕を磨いている。就職試験の際には「電卓士を取得するまでの長年の努力を、面接官にPRできました」と笑顔で振り返る。

高校3年時には生徒会活動などにも活発に取り組んでいた春香さんのことを江川さんは「こうと思ったら曲げない芯の強い性格」と話す。春香さんは、限られた時間の中で練習に励みながらも、電卓のタッチミスを繰り返すようになり、「このままでは上の段位を取れないかもしれない」と不安に感じていたという。

江川さんは、春香さんが塾で取り組んだ練習問題の正誤記録から、苦手とする数字の並び方を根気強く洗い出し、春香さん専用の練習問題を作成。以降、春香さんは検定試験前にはその練習問題を活用し、大学3年時には日本電卓技能検定協会と八王子商工会議所の両方で名人位を取得し、全国初の2冠を達成した。

「細かく観察されていて厳しいですが、生徒思いの江川先生に教えていただいたからこそ、続けることができました」とほほ笑む春香さん。今月は、名人位の中でも取得がさらに困難で、試験で満点が求められる「満点名人位」の取得を目指す。合格すればICAでは国内初の誕生となる。

江川さんは「これまで、根気強くそろばんや電卓の練習に取り組み、勝気に上を目指す塾生に恵まれました。今後も、良いお手本を示してくれた『西3きょうだい』に続く塾生を育てていきたい」と意欲を話している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。

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