人生はやり直せる 篤志面接委員の永原さん

「入所者から学ぶことばかり」と永原さん

刑務所や少年院などの矯正施設で、受刑者らの社会復帰を手助けする法務省委嘱の「篤志面接委員」。和歌山高等美容専門学校の理事長を務める和歌山県和歌山市の永原康男さんは、民間ボランティアで半世紀にわたって和歌山刑務所(女性刑務所)の面接委員を務めている。これまで関わったのは約6000人。あまり認知されていない篤志面接委員の活動を広く知ってほしいと強く願っている。
刑務所との関わりは今から56年前。刑務所内にあった美容学校で指導するようになり、その数年後、誘いを受けて面接委員になった。
篤志面接委員は医師や弁護士、教師や僧侶などさまざまで、全国で約1800人が活動。和歌山刑務所には現在、19人の面接委員がいる。永原さんは最もキャリアが長く、大阪矯正管区管内篤志面接委員協議会常任理事、和歌山刑務所篤志面接委員協議会会長を務める。
永原さんは国家地方警察巡査、元アメリカ銀行輸出為替課長・融資課長などの経歴を持つ。銀行員だった昭和40年、35歳で委嘱を受けた。釈放前指導として月に2度、1回につき5、6人、多いときには20~30人に社会に出る前に必要な心構えを話し、個別に相談に乗ることもある。
「気配り、目配り、心配りの重要性を話します。生まれ変わったような生き方をしなくていい。再犯しないことが一番大事なんです」

異性とのトラブルも女性の生き方に大きく関わってくる。女性たちに社会の順応性を身に付けてもらえるよう、男性側の心理を交えて語ることも多いという。
受刑者は自由を制限された生活の中で、公務員である職員に感情的な隔たりを感じ、言うことを素直に聞き入れづらい心理もあるという。そこで、人生経験豊富で、本音で接することができる篤志面接委員の役割が大きくなってくる。
「人生は絶対にやり直しができる」「どんなことがあっても生き抜いて」「もう二度とここへ来なくていい生き方を」――。永原さんは、そんなメッセージを伝え続けてきた。

心掛けているのは、同じひとりの人間として向き合うこと。「私自身、勉強嫌いで不器用だったので、彼女たちの気持ちがよく分かります。上から目線で物を言うのでなく、いつも相手と同じ目線で。そして『罪を犯した人』という目では見ないことです」。

覚醒剤や窃盗、殺人、不慮の事故など、服役の理由はさまざま。置かれた家庭環境や生活苦から、犯罪に走ってしまう場合もある。生まれつき悪い人はいないという性善説のもと、そこに至るには相当な理由があったのだろうと推し量る。
社会復帰した受刑者が訪ねて来てくれたり、手紙が届いたりしたときは何よりうれしい。一方で、二度とここへは来ないと誓っても、犯罪を繰り返してしまうケースもあり、人の心の弱さを感じる。
全国的には民間運営の刑務所も生まれており、「社会復帰や矯正支援には、今後ますます民間の力が不可欠になってくるのではないでしょうか」と見据える。

「そのためにも、世間の理解が必要。刑務所に行きたいと思って行った人は一人もいません。出所した人に悪人というレッテルを貼らず、温かく迎える社会であってほしい」、永原さんはそう願っている。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。