2世の苗木を植樹へ 塩竈神社「和合の松」

残された深い根を見つめる遠北さん㊧、松の成長を見守ってきた奥津さん

「和合の松」が生きていた――。和歌山県和歌山市和歌浦中の塩竈(しおがま)神社で2012年の6月23日に突如倒れた松の大木は、樹齢200年以上ともいわれ、家庭円満の守り神として多くの人の信仰を集めてきた。名勝・和歌の浦のシンボルでもあった姿をよみがえらせようと、地元住民らの働き掛けにより、松では通常難しいとされる挿し木によるクローン苗2本が成長し、21日に元の場所に植樹されることになった。
6年前のその日の朝、和歌浦を見守り続けてきた約20㍍の松が突然、大きな音を立て根元から折れてしまった。
「とてもショックで、身を引き裂かれるような思いでした」と塩竈神社の権禰宜、遠北喜美代さんは振り返る。

和歌の浦万葉薪能の会の代表、松本敬子さんも、松が倒れたことに心を痛めた一人。頭に浮かんだのは、隣り合う玉津島神社の熱心な世話人で「和歌浦のことを頼みます」と残して亡くなったある女性のこと。「あの方なら、こんな時どうするだろう。何とか松の2世を育てられないか」。
松本さんは、その日のうちに信頼する樹木医に相談。県が撤去した木の枝の一部を、樹木医を通じて県林業試験場(上富田町)に送り、挿し木による増殖が試みられた。

無事、ある程度の大きさに成長した3年前からは玉津島保存会の会長、同市松ケ丘の奥津尚宏さんの自宅庭で大切に育てられてきた。そのうち2本が25㌢ほどの植樹可能な大きさになり、国の許可を得て植樹することを決めた。奥津さんは「うまく育つか心配でしたが、何とか成長してくれてほっとしています」と話す。
同神社は子授け、安産の神様として名高い。「和合の松」の地中にはう根は深く、絡み合うような姿が万物の根源とされる陰陽や夫婦のむつまじい和合に通じることから、そう呼ばれるようになった。今も残された松の根に手を当て、願いを込める女性も少なくなく「塩竈さんのおかげで子どもを授かった」「無事に元気な赤ちゃんが生まれた」と、神社には参拝した女性たちから喜びの声が多く寄せられる。

遠北さんは「あの場所にあって当然のように思っていたので、なくなって存在の大きさを知りました。皆さんが松を大切に思ってくださるのは大変ありがたいこと。2世として芽吹いた命が受け継がれていくことは、明るい希望です」と心待ちにしている。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。

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