津本陽さん死去 和市出身の直木賞作家

津本陽さん(和大付属小学校で、2006年6月17日撮影)

『下天(げてん)は夢か』などの歴史小説で知られる和歌山市出身の直木賞作家・津本陽(つもと・よう、本名・寅吉=とらよし)さんが26日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため東京都の病院で死去した。89歳だった。
津本さんは東北大学法学部を卒業後、会社員をしながら同人誌に企業小説や私小説を発表。1978年に和歌山の太地を舞台に古式捕鯨を描いた『深重(じんじゅう)の海』で直木賞を受賞した。
89年には織田信長を主人公にした長編歴史小説『下天は夢か』がミリオンセラーとなり、刑事小説や経済小説などでも大きな足跡をしるした。剣道三段、抜刀道五段の腕前で武芸への造詣も深く、『明治撃剣会』など迫真の殺陣描写で剣豪小説に新境地を開いた。
97年には紫綬褒章を、2003年には旭日小綬章を受章、2005年には菊池寛賞を受けている。
徳川吉宗を描いた『大わらんじの男』や、南方熊楠を題材にした『巨人伝』、
松下幸之助の生涯をつづった『不況もまた良し』など、ふるさとの偉人を取り上げた著書も多数発表した。
津本さんは度々和歌山を訪れて講演を行い、2006年には、母校の和大付属小学校の創立130周年を記念した同窓会の総会に出席。「付属小学校の子どもたちに未来を託す」のテーマで講演し、「勉強だけに偏らず、日本や世界で今起きている物事について考え、直すべきところに気付けるようなスケールの大きな人間に育って」とメッセージを送っていた。
親交があった仁坂吉伸知事は29日の定例会見で「しばらくお会いしていなかったが、まさかご病気だったり重体だったりとは思わなかった」と話した。津本さんとの対談や、陸奥宗光を題材にしたNHK大河ドラマ用の小説執筆を依頼したことなどの思い出を振り返り、「本当に尊敬している和歌山の大作家。素晴らしい人だった。大変残念」と惜しんだ。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。