不便は発明のヒント 樋口さんのアイデア商品

開発したグッズを並べる樋口さん㊨と相棒の大畑さん

「もっと使いやすくならんのかな」。アイデア商品の開発を手掛ける㈱パブリック(和歌山県和歌山市栗栖)代表の樋口明さん(76)は、日々の生活で不便を感じると、すぐに考えてしまう。頭に浮かんだら、まずは身近な材料で試作品を作ってみる。その繰り返し。「これまで作ったグッズの種類だけは誰にも負けへん」と胸を張る。
20年ほど前、孫と缶を転がして遊んでいた時に思い付いたのが「飲料容器分別器」。飲み終えたアルミ、スチール、瓶を磁石とスプリングを利用して選別するユニークな商品で、市の発明コンクールで最優秀賞を取った。「あれが『アイデアの道』に入るきっかけだった」としみじみと振り返る。
もとは建具屋。食堂経営や設備管理の仕事を経て2002年、仲間と今の会社を立ち上げた。
最近の自信作は、「セパレーツハンガー」。3月に東京で開かれた発明コンクール「なるほど展」(婦人発明家協会主催)で「なるほど賞」を受賞した。丈夫な塩化ビニルのパイプを材料に、ハンガーが中央で二つに折れる素朴な構造で、首回りの狭い服も簡単に通して干すことができる。「ね、すごく便利でしょう?」。
社員は9人。営業、販売など役割分担があり、開発担当は樋口さんと、同じく「発明家」の友人、大畑博さん(70)だ。1人より2人で考える方がアイデアが湧く。冗談を言い合いながら「こうした方がいいんちゃう」と毎日頭をひねっている。
2006年に開発した、水なしで排泄物を処理できる簡易トイレ「こころづかい」はよく売れた。もとは介護用品として作ったが、東日本大震災以降、災害時の備えとして他府県からも注文が舞い込むほど大当たりだった。
その後も、手を汚さずペットのふんを後始末できる道具や杖が倒れないよう立たせておける支え棒など便利な道具を次々と考案してきた。
勇んで特許申請しても、すでに類似の商品があり肩を落とすこともしょっちゅうだ。コストが掛かりすぎて売り物にならなかったものも自宅に山ほどある。でも、樋口さんは諦めていない。「全てに期待している。いつか売れたらいいなって」。
今、車のシートベルトに工夫を加えた「新商品」を開発中。「ひょっとしたら化けるかも」とにやり。アイデアを思い付いたら100円ショップやホームセンターに材料を探しに行く。心躍る時間だ。「好きなことを自由にできて毎日楽しい。そろそろ一発当てようかな」と大畑さんと顔を見合わせて笑った。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。