車いすで着物楽しむ 福祉着付師の宇治田さん

着付けを確認し、鏡の前で笑顔の宇治田さん㊧

和歌山県和歌山市の宇治田いさ子さん(54)はこの春から、県内では珍しい福祉車いす着付師として活動している。高齢者や障害のある人の着物や浴衣の着付けで、ファッションショーやイベントへの参加をサポート。車いすだけでなく、ベッド上で生活する人やリクライニング車いすを利用する人にも対応する。宇治田さんは「諦めてしまう人が多いかもしれませんが、皆さん同じように着物が着られることを伝えたい」と願っている。

「わぁ、かわいい」――。夕方に和歌山城西の丸広場で行われる夏祭りを前に、同市の髙田友紀子さん(22)はピンクや黄色の花がデザインされた浴衣に袖を通した。

いつか着たいと思いながら、着られずにずっとしまい込んでいた浴衣。鏡の前で車いすに座ったまま着付けてもらうその表情は、みるみるうちに笑顔になっていった。「気持ちが明るくなって、世界が広がったみたい。いろんなお祭りやイベントに出掛けたくなります」とにっこり。着付けが整うと、宇治田さんや家族と一緒に夏祭りを楽しんだ。

宇治田さんは短大の被服科を卒業。長い間着物からは離れていたが、病気やけがを経験しリハビリ生活を送る中「人を着付ける他装がしたい」と思い立ち、2年前から着付け教室に通うように。現在は「着物de地域活性化プロジェクトKIYORA和歌山」のメンバーとしても活動する。

「福祉車いす着付師」は、日本理美容福祉協会が車いす利用者に着物の着付けをするために設けた認定資格。全国各地で養成講座を開いている。

取得を目指すきっかけになったのは昨年の春、和歌山城で花見をする和装のグループに出会ったこと。そのうち一人だけ洋服で参加する車いすの女性と目が合い、宇治田さんはつい目をそらしてしまった。「何とか自分が着付けられないか」――。そんなとき車いすの着付け講座を知り、すぐさま受講。ベッド上で動けない人を対象に含むプロコースを修了した。

特別な着物を用意する必要はなく、車いすに座ったまま、ベッドに横になったままの状態で着せる。体の状態に応じて、クッションを挟んで車いすやベッドと体の間に隙間をつくるなど、体への負担をできる限り少なくして着せていく。帯の結び目は体の前にする工夫も。春には障害者グループの記念式典でファッションショーの着付けを担当。先日は、浴衣で流しそうめんを楽しむイベントの参加者を着付け、喜ばれた。

「ありがとう」の言葉や、笑顔が何より大きな励みになり、「『もっともっと皆さんに着せたい』という思いが強くなります」と宇治田さん。たくさんの人とコミュニケーションを取りたいと、最近は手話を習い始めた。介護の知識も必要になる。今後はさらに学びを深め、福祉に携わる人に、体が不自由な人のための着付けの手ほどきをしたいとの思いも膨らむ。

「成人式に振り袖を着られず、胸元にあてて記念撮影だけしたという話を聞くと、何とか力になりたいと心から思いました。一人でも多くの人に、着物を着る楽しみを届けたい」と話し、誰もが当たり前のように着物を着られるよう願っている。

12日にぶらくり丁で開かれる「ポポロハスマーケット」では、車いす利用者の着付けを担当し、ファッションショーが行われる。
着付けの問い合わせはメールで宇治田さん(isako.u.135@gmail.com)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。

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