年の瀬の「第九」存続危機 深刻な団員不足

年末の舞台に向け、練習で歌声を響かせる団員たち

一般公募の市民らが、ベートーベン作曲の「交響曲第九番」を歌い、年の瀬を飾る「第九」。和歌山では、和歌山県第九合唱団が半世紀近く活動を続けてきたが、ここ数年は高齢化などの影響で団員数が減少。運営も赤字が続き、今後の存続が危ぶまれている。「46年間、和歌山で続けてきた第九のともしびを消すわけにはいかない」――万感の思いで、ことしも年末に向けて練習のスタートを切った。

昨年末、45回の記念公演を成功させた同合唱団。「この回を最後にすべきかもしれない、そんな思いもありました」――。事務局を務める和歌山音楽愛好会「フォルテ」の花光郁さん(57)は意外な言葉を口にし、団員不足や深刻な運営の現状を明かす。

存続に不安を抱くようになったのは10年ほど前から。「特に最近2、3年は団員が100人を切っている。来場者は1000人に満たず、赤字続きで危機的。何とか続けたいという思いだけでやってきたが、もたない状況にきている」。

花光さんは第14回の公演から関わり、演奏会を支えてきた。ベートーベンが第九に込めた友愛や世界平和へのメッセージを受け止め、第4楽章のクライマックス、歓喜に満ちた歌声は、いつ聴いても鳥肌が立つほどの感動を味わうという。

団員は、京都市交響楽団や関西フィルハーモニー管弦楽団、プロのソリストと共に舞台に立つ。同合唱団は1972年の初演以来、昨年までに延べ8000人余りの市民が参加。手作りの演奏会を続け、年末の恒例として定着させた。

ピーク時の第25回は約350人の団員がおり、会場の県民文化会館大ホールは立ち見客が出るほど盛況だった。30回の演奏会を過ぎる頃までは約150人の団員を確保できていたが、以後は減少傾向。かつては毎年20人ほどの新団員を迎えていたが、最近は1桁にとどまる。

花光さんは「アマチュアのオーケストラでやればいい、という意見があるかもしれませんが、市民が一流のオーケストラと共演し、水準の高い演奏会をつくることを目指してきた」と活動の意義を強調する。

また、山本光子団長(79)も「プロのオーケストラで、市民参加型の手作りの演奏会をしている合唱団は数少ない。和歌山のような地方都市で、45年以上も続けてきたところは他にはありません」と胸を張る。

団員の年齢は60代から70代が中心。ことしの結団式と初練習には小学生から80代まで約40人が参加した。同団は「本来なら150人は欲しいところ。一定レベルの演奏を届け、存続していくためには最低でも100人は確保したい」とし、本番までに120人を目標に参加を募る。

これまでは夜の練習が基本だったが、団員不足を補おうと、数年前からは参加しやすいよう昼の部も設定。大学の合唱グループらに協力を呼び掛けるものの、演奏会の時期と重なるなどの理由で、思うような成果にはつながっていない。

また、安定の運営には1400人の来場が必要だという。チケットの販売は団員の手売りに頼る面が大きく、団員が少なければ集客にも苦慮する。

19歳で入団し、初演から欠かさず第九に出演してきた副団長の小島伸朗さん(65)は「小学生から年配の方まで一緒に歌えるのは、この上ない喜び。何より団員同士のつながり、人間関係が楽しく続けてこられた。第九自体は他でも歌えるかもしれないが、このメンバーでなければ意味がない」。山本団長は「『人類全てきょうだい』と、ベートーベンが第九に込めた願いを、今の日本に届けることの重要性を感じています。合唱の輪と仲間の輪を広げ、何とか歌い継いでいきたい」と願っている。

ことしの「第九」は12月9日、同市の県民文化会館大ホールで午後3時開演。団員の入団テストはなく、楽譜が読めなくてもOK。問い合わせは県第九合唱団(℡073・422・4225)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。