2017年04月28日 09:00
「ふたりとも和室が好きなんです」という若い夫婦。和歌山県北部、世間で言ういわゆる「古民家」は、もともと大工さんが住んでいたしっかりした作りの日本家屋。その古民家をリノベーションした住まいは、大胆に変化した場所もあれば、ほぼそのまま活かされた場所もあり、その家が持つ‘良さ’がきちんと残されています。かつて住んでいた人の想いを残しながら、新たな家族を迎える。そこには、新築にはない温かさがありました。
和歌山県北部の某所、周辺にはス―パーやガソリンスタンドがあり、主要幹線まで数百メートルの非常に生活しやすい住宅地。しかも静かで、ここなら穏やかな暮らしができる、そんな思いさえ浮かぶ場所にあるのが今回お邪魔したお家。
築40年の家屋をリノベーションしたこの家は、しっかりした作りの伝統的な平屋。一見すると小さな子供がいる若い夫婦が住む家にはとても見えませんが、中身は驚くほど現代風に変貌。しかし一方では敢(あ)えて昔のままの姿を残している部分もあるとのこと。すべてを真新しくするリフォームとは一味違った、独自の価値観について、施主であるご夫婦にインタビューしてきました。
ちいさなお子さんのいるAさん夫婦。自分たちの生活のことや子育ての事を相談した結果、今回紹介する住宅の購入&リノベーションに至りました。なぜ、古民家を購入されたんですか?と尋ねると、おふたりは口をそろえて「和室が好きだから」とブレない発言が。また、「何もかもが真新しい近代的な新築住宅にも自分たちには少し違和感があった、どこか懐かしくホッとする雰囲気を暮らしに求めていた」とも聞き、もともと仲が良く、お互いを支え合う夫婦だからこそたどり着いた住まいのスタイルだと実感しました。
ダイニングへの入り口にあるドア。ガラス部分はもともとあった食器棚のガラス戸をリユース。昭和レトロ感の懐かしさがあふれる、素敵ポイント。建具の塗装もドイツの自然塗料「OSMO(オスモ)」でセルフペイントしたというこだわりよう。
奥さんが特に気に入っているのがキッチン。窓を除いてもともとの姿はほぼ面影を残していませんが、暖かみのある雰囲気はそのまま受け継がれています。また、この家に残されていたダイニングテーブルの天板もリユース。なにもかも新しさを求めるのではなく、使える部分は活かす。その哲学が見えてくるようです。
実はこちらのお宅には、内壁、外壁にPOTER’S PAINT’S(ポーターズペイント)というオーストラリア発祥のブランドの塗料を使い「手で」ペイントされています。しかも、予算上の理由からペイントは施主であるご夫婦が休みの日などを利用し、お友だちを巻きこんだりもしながら全室の壁や天井に至るまでをセルフペイント。ご夫婦曰く「ペイントは本当に大変でした、でもその分愛着はきっと普通よりも2倍も3倍もありますよ。」とにっこり。
実際に夫妻が塗っている風景はfacebookでご覧いただけます。
ほとんどの場所を自分たちで塗ったため、大変だったそうですが、出来上がった時の感動は特別なものに。朝、昼、夜と光によって表情が変わるポーターズペイントは他では得られない豊かな愉しみがあるそうです。
奥さんのお気に入り【その2】ボタニカルゾーン:観葉植物の好きな奥さんが大切なグリーンたちの居場所に選んだのは、南側の廊下だった部分。日当たりもよく、ここでボーっとしているとうとうとしてしまいそう。上部に見える、もともとあった黒竹の欄間(らんま)は奥さんのイチオシポイント☆
もともと、「お客用玄関」と「勝手口」の二つあった入口のうち勝手口はシュークロークに。またリビングルームの横には「家事室」と呼ばれる部屋があります。聞けば、ここは基本的には洗濯ものを整理する部屋。取り込んだ洗濯物をそのままタンスにしまえるうえに、急なお客が来ても‘とりあえず隠す’ことができる奥さんにはとてもうれしい部屋。どちらも夫婦にはなかった発想であり、実際の生活に寄り添ったプランを提案してくれたデザイナーに感謝と信頼のどちらの想いも寄せているとのことです。
もともとあった二間あわせて20畳ほどになる和室。ここについてはほとんど手が加えられていません。もちろん、畳は新しいものに交換され、障子や柱なども美装が入り、見た目には古さを感じさせない状態です。記事の冒頭にもあった立派な欄間(らんま)も目を引きますが、床の間には当時の冷房機器が、、、。実はこの機械、全く動かないのですが、趣があるのであえてそのままにしてあるとのことです。
かわいい娘さんものびのびと走りまわって楽しそうです。これから家族が増えたり、お客さんが来たりしてもたっぷり余裕が。
いかがでしたでしょうか、新築の建物ももちろん素敵ですが、新築では得られない住み心地のよさがこの家にはありました。ここまでたどり着くには、Aさん夫婦もいろいろな苦労があったそうですが、「ここに住むことにして本当によかった」と毎日実感しながら生活しているそうです。
この家のリノベーションを手掛けたのは和歌山市の建築デザイナーの木下典子さん。「普通は選ばない築40年の平屋を‘好んで’ご購入された若いご夫婦。そのお二人の住まいへの想いをカタチにするため、何度も打合せを重ね、お互いに大変な作業だったと思います。ただ、そのぶん楽しみながら同じ方向を向いて進めることができました。完成してみれば、まるでずっと前から住んでいるかのようにお二人が自然と暮らしている姿を見て、こんな新しい暮らしのカタチも素敵だな、とこちらが気付かされました。それだけに今回のリノベーションには想い出が詰まっています。」とのコメント。
普段から木下さんは依頼主との対話を重視して、設計から施工、インテリアまでをトータルで家づくりを進めるスタイルが特徴。図面の苦手な人でもイメージがしやすいように家具やインテリアを含めたカラーのイラスト風パースを使用するなど、特に女性の立場に立ったスタイルの提案を得意とされています。
様々な質感と多彩なカラーで空間の雰囲気を変えるオーストラリアのポーターズペイントを体感でき、ワークショップも随時参加できます。また、五感で感じる暮らしをコンセプトにしているので大好きな紅茶の販売や教室等も手がけられていますので、気軽に訪れてみては?
ぜひ、ホームページやfacebookものぞいてみてください。
いかがでしたでしょうか、自分たちの理想の住まいってスタイルはいろいろですよね。
ご夫婦の素敵な笑顔と暮らしぶりを見ているとほんとうに幸せな気持ちになれました。みなさんもぜひ、自分の素敵な住まいを見つけてくださいね。
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