災害救助犬の出動協定 和歌山市とNPOが締結
和歌山市は21日、災害発生時に、行方不明者の命を救う捜索活動に活躍する災害救助犬が迅速に出動できるよう、NPO法人災害救助犬ネットワーク(東京都、津田光理事長)と協力する協定を締結した。同NPOと市町村の同様の出動協定は4市目で、県内では初めてとなった。
【写真】協定書を手にする津田理事長(奥左)と尾花市長(同右)、災害救助犬とハンドラーら
同NPOは「救えるはずの命を救うために」を掲げ、行方不明者を捜索する手段として日本ではまだ認知度が低く、頭数や訓練も不十分な災害救助犬の体制整備に向けて活動する団体。東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨、能登半島地震などの被災地で実際に捜索活動に取り組んでおり、スイスの災害救助犬団体「REDOG」と捜索活動に関する協定を締結している。
今回の和歌山市との協定では、南海トラフ地震をはじめ大規模災害が発生した場合、建物の倒壊や土砂崩れなどで行方不明になった被災者の命を救うため、同NPOは市の要請に基づき、迅速かつ効率的に捜索活動を進めるため、全国各地の拠点から災害救助犬を派遣する。
同NPOはこれまで、7府県、3市と同様の協定を結んでいるが、和歌山市との協定では初めて、災害時に全国の団体から集まってくる災害救助犬の指揮を、同NPOが担うことが条文に明記されている。津田理事長によると、東日本大震災などでは、協定を結んでいた自治体の行政機能が混乱し、災害救助犬の派遣場所の指示ができず、迅速な動きが取れなかった教訓があり、今回の条文は実効性を確保する上で重要な内容となる。
締結式は市役所で行われ、同NPOから津田理事長、青山省三顧問、3頭の災害救助犬とハンドラーたちが出席し、尾花正啓市長と津田理事長が協定書に署名した。
尾花市長は能登半島地震を例に、重機などで障害物を啓開することもできていない困難な発災初期の状況の中で、捜索活動が迅速に行われなければならないことを指摘し、「人間の力だけでは困難な捜索に災害救助犬の協力が得られるのは大変心強い」と期待を寄せた。
協定をより実効あるものにするため、青山顧問は市の防災訓練などへの参加を申し出、津田理事長は「災害救助犬が必要だと思った段階で出動要請をすると遅れてしまう。災害の発生イコール救助犬の出動と捉えてほしい。行政はフライングを恐れるが、出動して必要がなかったら、それでいい。フライングはOKだ」と話した。
協定調印後、市役所前の和歌山城西の丸広場で、災害救助犬のジュラ号、エルク号、アンリ号の3頭のデモンストレーションを実施。ハンドラーと並んで歩き、走り、指示通りに止まり、座るなど、的確に動くことができる「服従性」の訓練がなされていることを見た後、倒壊した建物を模した三つの覆いから、一つの中だけにいる人をにおいで探し出す様子も実演した。