長時間労働の改善を 過労死防止対策シンポ

基調報告する岩城事務局長

大手広告会社・電通の新入社員が過労自殺したことをきっかけに労働時間をめぐる議論が活発化する中、長時間労働の現状と防止策について考える「過労死等防止対策推進シンポジウム」が9日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、企業で労務管理を担当する社員や一般市民ら約70人が参加し、専門家や長時間労働で家族を亡くした遺族らの訴えに耳を傾けた。

厚生労働省が主催。11月の「過労死等防止啓発月間」の前後に、全国各地で開催している。

シンポジウムでは、弁護士として過労死の問題に向き合ってきた、過労死等防止対策推進全国センターの岩城穣事務局長が、国内における過労死の現状や対策に向けた法整備の流れを解説。過労死が初めて社会問題となったバブル期は中年男性が多かったのに対し、現在は性別や年齢に関係なく多発していると警告した。長時間労働の原因について、各職場の仕事量が非常に多く、必然的に長時間働かざるをえないと指摘。社会構造の改革に向け、国民的な議論の必要性を訴えた。

岩城事務局長によると、労働時間に関する統計にはサービス残業が含まれていない場合も多いという。平成26年に成立した「過労死等防止対策推進法」については、画期的な法律と評価し、過労死を出した企業名の公表や入札制限の実施を訴えた。

日本福祉大学大学院の山崎喜比古特任教授は産業保健学などの研究成果を紹介。労働法の順守が国際競争力の低下を招くという批判について、ワークライフバランスの推進に積極的なノルウェーの状況を紹介し、多くの労働者が午後6時までに帰宅しているにもかかわらず、1人当たりのGDPは世界4位と高水準にあると述べた。山崎特任教授によると、長時間労働に伴う睡眠不足は認知症の発生確率を高めるといい、労働者の健康維持に向けて、EU諸国にならい11時間程度のの勤務間インターバルの導入を訴えた。

県内の介護老人福祉施設に勤務していた夫を過労死で亡くした女性は、裁判を通じて使用者側が無責任な姿勢を取り続けたことを批判し、「過労死は誰にでも起こりうる身近な社会問題です。夫の死が社会の教訓になるよう、この問題について十分な認識を持ってほしい」と呼び掛けた。

弁護士で、働くもののいのちと健康を守る和歌山県センター副理事長の由良登信さんは、これまでに受けた労働相談の事例を紹介し、トラック運転手として法定積載量を大幅超過した荷物を休みなく遠くまで運搬させられ、事故死した男性の例などにふれ、「大変な状況で働いている人は多くいる。各企業には命より大切な仕事はないと肝に命じてほしい。過酷な勤務の原因となっている中小企業の厳しい経営状態を踏まえ、国は中小企業支援予算の増額を検討するべきだ」と訴えた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。

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