将軍義昭の刀は偽物 道成寺伝来の来國光

足利義昭から贈られた刀

和歌山県日高川町鐘巻の道成寺(小野俊成住職)が、約450年前に室町幕府最後の将軍・足利義昭から贈られたとして保管してきた名刀「来國光(らいくにみつ)」が偽物であることが分かった。現在開催中の県立博物館の特別展「道成寺と日高川」に合わせて行った鑑定で判明。小野住職は「残念ではあるが、放浪中の将軍の持ち物としてはつじつまが合い、道成寺の歴史がまた一つ解明されたと思う。今後も大切にしていきたい」と話している。

足利義昭は将軍家の権力が弱まった室町時代末期の1568年、織田信長を頼って第15代将軍に就任したが、後に信長と対立。上杉謙信や毛利輝元、武田信玄ら戦国大名に呼び掛け「信長包囲網」を形成するなどして対抗したが、73年に降伏し、京都を追放された。

その後、将軍家の力が及ぶ地域を放浪。同年12月、室町幕府管領・畠山氏の勢力が残っていた紀伊国の興国寺(由良町)を訪れた。道成寺絵巻巻末の記述によると、その際、義昭は道成寺縁起絵巻を見たいと所望し、当時の道成寺の住職が興国寺に赴き、絵巻を披露。義昭は「日本に二つとない立派な縁起」と絶賛し、巻末に花押を記すとともに、住職に太刀、馬、杯を褒美として授けた。

太刀には、鎌倉時代末期から南北朝時代の刀工で作品の多くが国宝や重要文化財に指定されている「来國光」の銘が入っており、道成寺では杯とともに大切に保管してきた。

過去に2回行った鑑定では「刃の反り具合が不自然」という指摘はあったが、偽物とは分からなかった。今回、県立博物館が鑑定したところ、「来國光」の銘の字体が他の作品とは異なっていることなどが分かり、偽物と結論づけられた。

小野住職は「刀をもらったあと、寺の者が手間をかけて偽物とすり替えたとは考えにくく、将軍からもらった時にすでに偽物だったのでしょう」と話し、「当時の将軍が偽物と知らずに持っていたとも考えにくい。侍に渡すと偽物だと分かるので、刀に詳しくない僧侶に渡したのではないか」と分析。「約450年間、絵巻とともに大切に保管してきた刀が偽物だと判明し残念。ただ、放浪中の将軍が僧侶にくれたものと思えばふに落ち、将軍からもらったという信ぴょう性が高くなったと思います」と話し、今後も寺で大切に保管していくという。

刀は県立博物館の特別展が開催されている11月26日まで、同寺の宝仏殿で展示している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。