有吉佐和子文学賞決まる 最優秀賞は日沼さん
和歌山市は、市出身の小説家・有吉佐和子(1931~84)の名前を冠して創設した「有吉佐和子文学賞」の第1回受賞作品を発表した。最優秀賞に日沼よしみさん(75)=山梨県南アルプス市=の『手紙』、優秀賞に原徹さん(63)=愛媛県松前町=の『杜鵑草(ほととぎす)』が選ばれ、中学・高校生を対象とした奨励賞には和歌山県内から2人が入った。
【写真】有吉佐和子文学賞の選考結果を発表する尾花市長
14日、尾花正啓市長が定例記者会見で公表した。同文学賞は、より多くの人々が創作の喜びを感じ、有吉作品や和歌山を知るきっかけにしてもらおうと、全国の中学生以上を対象にエッセイを募集。第1回には全都道府県と海外から2077点(うち和歌山県外1350点)の応募があり、海外はアメリカ、フランス、ベルギー、中国、韓国などの在住邦人からだった。
応募者の年齢層は中学1年生から99歳と幅広く、10代が801人で最多。選考は、有吉佐和子記念館の恩田雅和館長をはじめ学識経験者ら4人への意見聴取を経て決定した。
最優秀賞を受賞した作品『手紙』は、病に倒れた夫を介護する日々を送る作者が、若き日に夫との文通で受け取った手紙の束を見つけたことから、夫の思い、共に過ごした歳月の記憶がよみがえり、前向きで力強く心が動いていく様子を表現している。
意見聴取では「SNSの発達でどんなに離れていても瞬時に連絡を取り合えることが当たり前の世の中で、手紙の温かさが伝わってくる作品。文通や公衆電話でのやり取りは、現代の若者には想像もできない長い時間が二人には流れていたことを、流れるような文章でつづっている。夫婦の愛とつながりの強さが、心に迫る素晴らしい作品」とのコメントがあった。
尾花市長は「海外を含めてこれだけ多くの方々に作品を寄せていただけたのは本当にうれしく、意外だった」と予想を超える応募数だったとし、有吉佐和子とその作品の知名度の高さが多くの応募につながったのではないかと述べた。
応募作品のテーマも非常に幅広く、有吉文学や和歌山について調べ、考察したものも多かったことから、「文学の振興にもつながり、和歌山を知っていただく意味でも非常に大きな意義があった」と強調した。
表彰式は6月2日、有吉佐和子記念館で行われ、受賞作品は表彰式の後、市ホームページなどに掲載される。
佳作、奨励賞の受賞作は次の通り。
【佳作】
『胸の中でひかるもの』桑原祥恵(東京都足立区)
『私を生かす心の栄養』後藤里奈(東京都杉並区)
『和歌山にて、星を繋ぐ。』武智弘美(神戸市)
『継承の地』松村典子(大阪市)
『梅騒動』森美恵子(福岡市)
【奨励賞】
『姉になった日』鏑木花野(東京都板橋区、クラーク記念国際高校)
『八週五日』谷和佳乃(岩出市、智弁和歌山高校)
『インスタントコーヒーの粉』辻拓真(和歌山市、西脇中学校)
『酒という謎』芳賀永都(仙台市、東北学院高校)
『高校生が愛について考えてみた結果』藤田椛子(横浜市、ホライゾンジャパンインターナショナルスクール)