「日本遺産」に認定 和歌山の捕鯨文化
文化庁は平成28年度「日本遺産」に、和歌山県(関係市町=新宮市、那智勝浦町、太地町、串本町)の「鯨(くじら)とともに生きる」を含む、全国19件の「ストーリー」を認定した。熊野地域が世界遺産と日本遺産の2大遺産エリアとなり、一層の観光振興が期待される。
日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語る「ストーリー」を認定。地域に点在する遺産を「面」として活用し、発信することで地域活性化を図る。
認定されると地域の認知度が高まるとともに、日本遺産を通じたさまざまな取り組みを行うことで地域のブランド化などにも効果が期待される。
同庁が昨年度始めた新しい取り組みで、大学院教授ら外部有識者でつくる審査委員会の審議を経て決定した。
県は今後、日本遺産ブランドの確立と認知度アップに向け、県、県観光連盟、関係市町・団体などでつくる協議会を5月に設立。補助金の交付要望を行い、熊野灘の捕鯨文化に関する案内板の整備▽日本遺産ガイドの養成▽ガイドブックやウェブサイトなどでの国内外への情報発信▽旅行商品化の促進──などに取り組ん
でいく。
仁坂吉伸知事は認定を受け、「熊野灘地域の捕鯨文化の歴史的経緯や地域の風習に根差し、世代を超えて受け継いできたことが評価された」と喜び、「いままで以上に熊野地域に多くの観光客が訪れるよう、受け入れ体制の整備や認知度向上の取り組みを進めていく」とコメントしている。
日本遺産は27年度認定ストーリーと合わせて37件になった。
ストーリー概要――
鯨は、日本人にとって信仰の対象となる特別な存在であった。人々は、大海原を悠然と泳ぐ巨体を畏(おそ)れたものの、時折浜辺に打ち上げられた鯨を食料や道具の素材などに利用していたが、やがて生活を安定させるため、捕鯨に乗り出した。
熊野灘沿岸地域では、江戸時代に入り、熊野水軍の流れを汲(く)む人々が捕鯨の技術や流通方法を確立し、これ以降、この地域は鯨に感謝しつつ捕鯨とともに生きてきた。
当時の捕鯨の面影を残す旧跡が町中や周辺に点在し、鯨にまつわる祭りや伝統芸能、食文化が今も受け継がれている。
記事元:わかやま新報
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