ジャズの本場アメリカで学んだ和歌山市出身のチューバ奏者・東方(とうほう)洸介さん(28)が、日本での本格的な活動のスタートを記念し、新年の幕開けとともにソロライブツアーを決行。1月6日には同市内原にある、なじみの店「ハシゴカフェ」で凱旋ライブを行う。ジャズでは珍しいチューバを操る東方さんは「チューバ一本でも飽きさせない演奏をしたい。お世話になった皆さんや、ふるさとに恩返しできれば」と意気込んでいる。
小さい頃から母にピアノを教わるなど、音楽が身近にあった東方さん。チューバとの出合いは、吹奏楽の強豪校・明和中学校の吹奏楽部に入部し、当時の顧問だった北田勝己教諭(58)に薦められたことだった。
当初はサックスを希望。金管楽器の中で最も低い音域のチューバについてあまり知らず、好きになれなかったが、演奏するうちに愛着を感じるようになっていったという。
指導した北田教諭は「体格も良く、いろんなパートに男の子がいればと思い、直感でしたね」と明かす。「ひたむきで最後までやり抜く性格。上達も早く、練習を重ねるほどにパートの重要性を感じ、演奏の楽しさを感じているようでした」
同部在籍中には全日本吹奏楽コンクールに出場。進学先の那賀高校でも吹奏楽部に所属した。愛知県立芸術大学音楽学部でチューバを専攻し、クラシックを主に学んだ。
あまり目立たない楽器のチューバだが、いつしか「自分の演奏で、みんながかっこいいと思うような楽器にしたい」と感じるようになり、本格的に学びたいと考えていたジャズの本場、アメリカへ。全米一ともされるジャズ研究の名門ノーステキサス大学で、専門的に学んだ。
2014年には、世界中からチューバ奏者やユーフォニアム奏者が集まるITEC国際ジャズコンペティションで決勝に進出。昨年は、2度目の挑戦で、ディズニーリゾートオールアメリカンカレッジバンドのオーディションに合格。日本人ではおそらく初という。21人のメンバーの一員として、カリフォルニアのディズニーランド・リゾート内で演奏パフォーマンスをし、ジョン・クレイトンやゴードン・グッドウィンらプロ演奏家をはじめ、多くのアーティストと共演している。
2016年8月末に帰国し、現在はドラムやユーフォニアムなど、他楽器とバンドを組み、東京を拠点に大阪や名古屋などでライブ活動を展開。音楽劇を手掛けるなど、新たな境地を開拓している。
米国で刺激を受け、言語やコミュニケーションツールとしての音楽を、強く意識するようになったという東方さん。伝えたいことや届けたい思いを、メロディーに乗せて表現する。
夢は当初から一貫して、サックスやトランペットのように、チューバを「かっこいい」と思ってもらえるような楽器にすること。そして「チューバを演奏したいという人が増えるよう、少しでも力添えできたら」と話している。
一般的にはメロディーを奏でないチューバ。ソロで活動する日本人は少なく、恩師の北田教諭も「一つの独奏楽器として、あまり人がやってこなかったことに挑戦しているようなので、いろんな人にアピールしてほしいですね。一般の方もチューバの見方が変わってくるのではと思います」と期待を寄せている。
ハシゴカフェでのライブは午後7時半から。投げ銭、1ドリンクまたは1フードオーダー制。問い合わせは同店(℡073・445・5688)。