昭和59年に友好提携を結んで以来、交流を深めてきた県と中国・山東省は、ビジネス分野の関係強化への動きを進めている。6日には同省の行政幹部や企業関係者ら約120人が来県し、県内の食品などの関係企業との商談会に臨んだ。期待は高まる一方、輸出品として有望な果物類は、加工品以外は解禁に向けた日中政府間の交渉を待たなければならず、高いハードルが立ちはだかる。条件が整わない中、いかに関係を強化していくか、双方の知恵が問われている。
山東省は中国東部に位置し、歴史的に日本と関係が深く、平成27年の日本と同省の貿易額は約2417億ドルに達している。県と同省の経済交流は、県中小企業団体中央会が平成17年から毎年、県内企業と共に同省を訪問し、現地での商談会に参加するなど、県産品の販路拡大を精力的に支援しており、継続的な取り組みを通じて今回の和歌山での商談会が実現した。
商談会は和歌山市友田町のホテルグランヴィア和歌山で開かれ、同省の余春明商務庁長を中心とする行政関係者66人、企業関係者(バイヤー)41社と県内の食品・家庭日用品事業者など約20社が参加。県企業振興課の嶋田光浩主幹による県内の産業構造についての説明、同省商務庁の呂偉副庁長による農産物貿易についての講演などが行われた後、商談会となり、果物や水産物などの加工食品や日用生活品が並ぶ各ブースには大きな人だかりができた。
アイセンインダストリアル㈱(海南市)は、台所用のスポンジなどを出展。中国の取り引き先は上海周辺の事業者が多いといい、同社営業部の橋中孝佳マネージャーは「山東省との取り引きはまだ少ない。キッチン系の商品をよく知らない人もいたので説明した。商談会が商品を知ってもらうきっかけになればと思っている」と話す。
同省でゴマ油などの製造販売を行う業者は「しょうゆやカラスミが大変印象に残った。現時点で和歌山の事業者と取り引きはないが、販売を検討したい」と意欲を口にした。
商談会を通じて、山東省側の県産品に対する関心の高さは明らかとなったが、両者のビジネスが拡大するには超えなければならないハードルもある。最も輸出に期待がかかる果物は、日中政府間の交渉停滞により加工品を除いて輸出不可能となっている。
日本政府は平成16年にミカンなどのかんきつ類や桃、精米などの輸出解禁を中国に対して要請したが、同20年に精米の輸出が解禁された他は、検疫基準に関する考え方の違いなどから具体的な協議すら進んでいないのが現状。県も政府への要望の中に交渉推進を毎年盛り込んでいるが、交渉は1品目につき平均で9年程度かかるといい、先は見えない。
主力品目の本格的な輸出ができない中、一つひとつの商談会を着実に取り引き拡大へつなげていくことが求められており、県企業振興課は「山東省も県内との取り引き増に意欲的。これからが重要であり、前向きに取り組んでいく」と話している。