恐竜の化石含む地層を発見 広川町で
和歌山県立自然博物館(海南市船尾)は20日、広川町白木海岸で、県内初のイグアノドン類の歯など4点の恐竜化石を含む地層を発見したと発表した。これまで県内で発見された恐竜化石は転石から産出された2点のみで、「白亜紀前期」(約1億1300万年前)と正確な層準が明らになるのは初めて。発見された恐竜化石などは31日から3月末まで、同館での展示を予定している。
同日、県立自然博物館で記者発表が行われ、和田恵次館長と小原正顕(まさあき)学芸課長と共に、共同研究者として北九州市立自然史・歴史博物館の御前明洋学芸員と、リモートで国立科学博物館の對比地(ついひじ)孝亘研究主幹が出席。概要や産出化石の詳細、発見の重要性や今後の展望などについて説明した。
同海岸には、約1億3000万年前の中世代白亜紀前期の陸域から汽水域で形成されたとされる湯浅層が約500㍍にわたり露出している。
層は泥岩、砂岩、礫岩で構成され、場所によっては貝類や植物の化石を豊富に産出するが、脊椎動物化石の産出は非常にまれ。昨年までの23年間で確認できたのは16点のみだったという。
共同発掘調査は昨年3月、御前学芸員が同海岸の地層で県内初のワニ類の化石を発見したのがきっかけ。同5月と9月の計8日間、同海岸で調査したところ、植物食恐竜のイグアノドン類1点、肉食恐竜のスピノサウルス類1点、他の肉食恐竜(獣脚類)2点、計4点の恐竜化石の他、カメやサメなどの脊椎動物の化石も計14点見つかった。
同館によると、イグアノドン類の化石(長さ14㍉、幅6㍉)は上顎についた歯とみられ、表面はかなり擦り減っており、根元の部分しか保存されていない状態だという。
また、水中を泳ぐことができ、主に魚を捕食していたスピノサウルス類の歯の化石(長さ18㍉、幅8㍉)は、ちりめんのような模様が確認できる。全国では県をはじめ、群馬県、福井県の3県のみから産出されている。
對比地研究主幹は「同じ時代の複数種類の化石が1カ所からまとまって出てきたというのは他に例がない」と今回の発見の貴重さを説明。「大陸の奥まった場所ではなく、比較的海岸に近い場所で化石が集積した地層が見つかったのは、生態系を知る上でも重要」と話した。
小原学芸課長は「今後この地層を集中的に調査することで、県産恐竜化石の産出数が飛躍的に増大し、当時の生態系を忠実に再現できるなど、さらなる発見が期待できる」と喜んだ。
記事元:わかやま新報
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