自然博物館移転断念 水槽展示なしに海南市反発
和歌山県海南市船尾の県立自然博物館の移転問題で宮﨑泉県教育長は25日、海生生物の水槽展示をせず、水族館機能がない施設とするとの県教育委員会の案が市の理解を得られず、「(移転予定地の)大野中への移転を断念せざるを得ない」との認識を示した。同日の県議会文教委員会での答弁。県の方針転換により対立してきた県と市の意見は折り合わず、移転計画は暗礁に乗り上げた。
【写真】移転断念の見通しとなった県立自然博物館(海南市船尾)
同館は1982年に開館し、ガラス幅15㍍、水量450㌧の大水槽などで約5000点の海生生物が展示されている。施設の老朽化や、海に面していることに伴う災害リスクなどから、仁坂吉伸前知事時代に移転が計画され、水族館機能の維持を前提に、2027年の移転オープンに向け、市は整備中の中央防災公園内に移転予定地を確保し、すでに造成を終えていた。
しかし、昨年12月に就任した岸本周平知事は、多額の経費がかかるなどとして、23年度当初予算案で移転関連経費の計上を見送った。その後、県教委が策定した施設の整備基本計画では、水族館機能を維持するには海水の輸送に膨大な費用がかかり、現実的ではないとし、水槽展示を断念する案を提示。市は、水槽展示ができないのであれば現在地でのリニューアルを求めるなど、議論は平行線となっていた。
25日の県議会文教委員会では、宮﨑教育長が、市との協議が合意に至らず、移転を断念せざるを得ないと説明した。
海南市・海草郡選出の藤山将材委員(自民)は、水族館機能の維持が移転の前提だったことから、「市としては納得のいく話ではないし、理解されないのも当たり前の話だ」と指摘。土地の取得、造成をはじめ、市は「いろんな迷惑をこうむっている」とし、同館の現在地での存続だけでなく、隣接地を含む再開発に取り組むことや、市が取得した土地の活用などに対する県の支援を求めた。
宮﨑教育長は「現地での建て替えなど全ての可能性を含めて、博物館としてどのように整備していくのか、虚心坦懐に考えていきたい。県財政、災害リスクも見極め、十分に検討した上で今後の方針を決めたい」と答弁した。
記事元:わかやま新報
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