水道管の補修材 和歌山市が企業と共同開発
和歌山市企業局は2日、水道管の接合部が地震などで破損する事態に備え、耐震性を向上させ、破損があっても漏水や断水を防ぐことができる新たな補修材を、民間企業と共同開発したと発表した。発生から2年となる六十谷水管橋の崩落による大規模断水を教訓に、水道インフラの安定と強化に向け、全国的な活用が期待される部材となっており、来月にも同水管橋に試験的に設置する。
【写真】共同記者会見した(左から)岩本社長、瀬崎公営企業管理者、中村社長
2021年10月3日、六十谷水管橋が崩落し、市北部のほぼ全域、約6万世帯(約13万8000人)が約1週間にわたり断水した。
今回の補修材は、断水を防ぐ対策などを検討してきた市企業局に対し、水道設備製造業の大成機工㈱(大阪市)と金属加工業の日本ニューロン㈱(京都府精華町)の2社から提案があり、昨年9月から3者で共同開発を進めてきた。
送水管には、地震などによる管路のゆがみの影響を吸収するため、接合部に伸縮性を備えた「伸縮可とう管」がある。新しい補修材は、伸縮可とう管を蛇腹状のステンレス製のカバーで覆って設置するもので、漏水を防ぎ、伸縮機能を向上させ、耐震性も高めることができる。
補修材の蛇腹部分には「特殊ベローズ形状」と呼ばれる従来なかった構造を採用。蛇腹の突き出た山の部分に高低差をつけることで、伸縮時に山がぶつかりにくくなり、より短い蛇腹の間隔で大きな吸収性能が得られるようになった。
六十谷水管橋に現在設置されている伸縮可とう管に比べ、4倍の20㌢まで伸びる性能があり、管の中心のずれにも5㌢まで対応できることが、実験により確認されている。
既存の送水管に外から設置するカバーになるため、断水せずに施工できることも大きなメリットとなっている。
2日、市役所で市の瀬崎典男公営企業管理者、大成機工の中村稔社長、日本ニューロンの岩本泰一社長の3人が記者会見。瀬崎氏は共同開発について、「水道の安心、安定的な供給の一助になり、行政だけではできなかった、大変意義のあるものになった」と話した。
六十谷水管橋への試験設置は11月中旬から下旬ごろに予定し、1年間ほどかけて腐食や劣化などの変化を調べることにしている。
また、試験設置に先立ち、10月19日に東京都内で開かれる日本水道協会全国会議水道研究発表会で、市企業局の共同開発チームが「伸縮機能を有する既設伸縮可とう管の補修材の開発」と題して論文発表を行う。