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鉄分薄口

連載【和歌山の鉄道コラム】 鉄分薄口(てつぶんうすくち)中編

公開日 2024.12.15

和歌山のフリーマガジン「LiSM(リズム)」の2021年9月号から2024年9月号にわたって連載していた和歌山の鉄道コラム「鉄分薄口(てつぶんうすくち)」(著:東和歌天空)。著者から入稿された文章のまま、前編・中編・後編の3回にわたって掲載します。お待たせしました!中編のはじまりはじまり~。

※文章・写真は掲載時のもので現状と合わない場合があります
※安全に留意し、他のお客さんに迷惑にならないよう撮影しています

【第13回】
各駅停車、のんびり過ぎる紀南の旅

遅い夏休み、鉄オタらしい休暇にしようと、JRきのくに線各駅停車の旅へ。

和歌山駅で駅弁「小鯛雀寿し」を購入して10時55分発の御坊行きの普通電車に乗り、御坊駅11時56分着。すぐに乗り換えて、御坊駅を11時58分に出発、紀伊田辺駅12時48分着。同駅のベンチで小鯛雀寿しを楽しみ、今度は13時42分発の新宮行き電車に乗り込みました。

周参見(すさみ)駅を過ぎると、電車はゆっくり海岸線を走ります。ぼーっと外を眺めながら各駅旅は最高!と悦に入っていたら、担当者からLINEが。

「道の駅特集の撮影で『なち』に行ったとき、悪天候で撮れんかった。今日は紀南に行ってんのやろ? ついでにJR那智駅(写真)で降りて撮ってきて」やて。まあいいかと、15時54分に那智駅下車。オーダー通りに撮影して、宿を取っている新宮行きの時刻表を見ると、次は17時22分発とは! 約1時間半待ち…各駅停車ローカル旅をなめたらダメです。腹減ったよー。

(2022年10月号)

【第14回】
どっちが爆睡できる?
どっちが早く着ける?

某日曜日、ヤボ用で梅田に行くことに。南海を利用することが多いのですが、阪和線の紀州路快速なら乗り換え不要だし、徹夜明けなので「ゆっくり寝ていくべ」と、JR和歌山駅に向かいました。

10時40分発の紀州路快速。爆睡するには、1人がけのクロスシートがうれしい。南海だとロングシートだし、深い眠りにつけないかも。520円出して快適なサザンの座席指定席を取るほどリッチじゃないし、地下鉄の人混みも避けたいから。

さて、久しぶりに乗る紀州路快速…熊取駅まで各停、天王寺駅までで1時間以上。大阪駅に着いたのは12時14分、爆睡したけど乗車時間は1時間34分かぁ。  

ちなみに、和歌山駅10時43分発のJR紀勢本線・和歌山市駅行きに乗ると10時50分に到着。和歌山市駅11時発の南海特急に乗車すれば、難波駅に11時59分着。てくてく歩いて、なんば駅発12時02分の地下鉄に乗り、梅田には12時11分に着く。こっちの方が早いやんけ!

(2022年11月号)

【第15回】
乗るなら今のうち!?
がんばれ50年選手

先月に引き続き、またヤボ用で大阪に行くことになった僕。コロナ禍以降、出かける機会が減り、久しぶりに和歌山市駅に向かいました。

4番線ホームに停まっていた特急サザン自由席車は、7100系と名付けられた昭和な車両。乗り込む前、ついスマホを取り出しカシャ。車体の製造年を見れば「昭和47年」と記載されている。西暦に直すと1972年だから、今年で50年(執筆当時)! 車内にLEDディスプレイはなく、扉の頭上には昔ながらのアナログな路線図。ロングシートに腰を掛けると、ふかふか。新型車両より快適でいいんじゃない?  

この7100系以前は、7000系車両が南海本線の主力だったとか。片開き扉は勢いよく閉まり、「ギロチン・ドア」と呼ばれ、その光景は名物に。製造開始は1963年で、52年後の2015年に運行を終了。となれば、7100系の寿命も…。乗るなら今のうち。ちなみに、加太線の「めでたいでんしゃ」は、7100系の車内リニューアル版。こちらは、まだまだ現役で走りそうですけど。

(2022年12月号)

【第16回】
念願の紀伊半島一周鉄道がそのうちに…

この写真は、祖父が下津(海南市)あたりで撮影した蒸気機関車。1965年ぐらいだそうです。※編集部注…モノクロ写真をカラー化しました

「あの頃はまだ、紀勢本線は電車ちごたんよ」と祖父。現在のJRきのくに線は当時、国鉄紀勢本線と呼ばれ、和歌山市駅と三重県の亀山駅を結ぶ路線の名称でした。紀州の”紀”と伊勢の“勢”で紀勢。明治時代に紀伊半島一周の鉄道が計画されたものの、海岸線に迫り来る山々を縫うように線路を敷く必要があり、「サルでも乗せるんか?」とバカにされたそうです。

悲願達成は1959年。電車が走るようになったのは1978年で、それまでは蒸気機関車かディーゼル車でした。今も新宮駅と亀山駅間は電化されずにディーゼル車ですが…。  

21世紀の今、紀伊半島を一周する高速道路の建設に躍起になっています。一方、JRきのくに線の利用者は減少の一途をたどり、特に赤字額が大きい白浜駅以南はヤバイ状況。下手すりゃ、無くなる? 現地の利用者はもちろんのこと、僕たち鉄オタにも寂しい現実です。

紀伊半島で鉄道敷設の難工事に携わった先人たちは、この状況をどう思っているのでしょうか?

(2023年1月号)

【第17回】
リニューアル列車コンプリート!

和歌山駅と貴志駅を結ぶ和歌山電鐵貴志川線。2006年3月までは、南海電鉄の貴志川線でした。南海高野線の車両が貴志川線向けに改造されて投入され、和歌山電鐵に経営が移った後もその車両が走り続けています。

やがて、車内や外観をリニューアルした列車が続々と誕生。「いちご電車」、「おもちゃ電車」(運行終了)、「たま電車」、「うめ星電車」、「チャギントン電車」、そして2021年12月から運行している「たまミュージアム号」。  

さて、“乗り鉄魂”を抱いてコンプリートを目指すべく、先日ようやく「たまミュージアム号」に乗り、達成することができました。感想は…片道28分の乗車だけでは、もったいない。これって特別料金は不要なの?って逆に申し訳なく思いましたわ。

「一日貴志川線乗り放題乗車券」(800円)を購入して、何回も乗ってみてね。運行車両のスケジュールや乗車券の情報は、同社のHPに掲載。さっ、次は加太線の車両をコンプリートしょ!

(2023年2月号)

【第18回】
「めでたいでんしゃ」は、
コンプリートできたのか?

写真は、めでたいでんしゃのどの種類だったかな? だいぶ前のことなので記憶が不確かです。いつの間にか「加太さかな線」という愛称が付いた加太線の正式区間は、紀ノ川駅~加太駅。学生のときには毎日利用していましたが、今のように観光電車ではなく、普通の通勤・通学電車でした。下校時には1時間に4本ぐらい走り、結構混んでいた印象。

調べてみると、めでたいでんしゃの登場は2016年。1970年代に投入された7100系車両をベースに、観光電車としてリニューアルされました。加太の鯛をイメージした「うろこ柄」の外装が特徴です。車内の座席はかわいく装飾されたロングシートで、乗り心地は昭和の電車っぽい大胆な振動(個人の感想です・笑)。  

先月号で「次は加太線コンプリート!」って書きましたけど、いまだ達成できず。「乗る乗る詐欺」になる前に、最新めでたいでんしゃ「かしら」の運行時刻を南海のHPでチェックして、乗りに行こ!

(2023年3月号)

【第19回】
「どえらい便利に!」は、
確かにそうだけど…

和歌山駅改札口前でこの写真を撮ったのは3月2日のこと。16日後の3月18日から、特急くろしお号が大阪駅に乗り入れ開始なので「どえらい便利になる」と大々的にPRしていました。和歌山駅から大阪駅まで56分で着きます。紀州路快速だと、和歌山駅から大阪駅まで所要約1時間半。

ちなみに、大阪駅から新快速で東へ1時間半乗れば滋賀県の近江今津駅まで、西は姫路駅から普通車に乗り換えて播州赤穂駅まで到達できます。「和歌山、めっちゃ遠い」と思われて当然。  

さて、「どえらい便利」な特急くろしお号は便利な分だけ、運賃1270円+特急料金1520円=2790円が必要になります。南海電車と地下鉄なら930円+230円=1160円。サザンの指定席(520円)を使っても1680円。つまりJRの半分強ですね。

地下鉄に乗り換えるのって面倒くさいし、結構歩かないといけないけれど、この差額を考えたらどうだろう…あなたならどっちを選ぶ?

(2023年4月号)

【第20回】
和歌山県内最強の無人駅「宮前」

無人販売のお弁当や餃子など「無人」がブームということで、今回は「無人駅」がテーマ。和歌山県内では無人駅の比率が6割強で、近畿の中ではダントツ。和歌山駅の隣(紀伊中ノ島駅、田井ノ瀬駅、紀和駅、宮前駅、田中口駅)すべて無人駅という事実が、無人駅の多さを物語っています。  

僕が大好きなユーチューバー「鐵坊主」さんの動画に、「日本全国のJR駅で最も住んでいる人が少ない駅を探すシリーズ」があります。駅から半径500m以内の人口と従業者数をランキング。

和歌山県内で多い順の1位はもちろん和歌山駅で、人口は4476人・従業者数は9405人の計13881人。そして第2位は宮前駅(和歌山市駅はJRじゃない扱い?)。人口は和歌山駅を上回る4828人・従業者数は2546人の計7374人。まさに最強の無人駅です。

平日の夕方に宮前駅で降りたのですが、自動改札機前は長蛇の列で、車掌さんが大忙しで乗降客の問い合わせに対応をしていました。ちなみに最少は、椿駅(白浜町)の人口35人・従業員数1人…。

(2023年5月号)

【第21回】
カエルのまち・印南へほろ酔い旅

「妄想鉄」として自己満足に浸れるのは、「JR時刻表」のページをめくっているとき。1冊1375円ですが、北海道から鹿児島まで頭の中で旅ができるのですから安いもん。でも、たまには本当に電車に乗り、ふらっと出かけたくなります。

時刻表を見ながら、NHK-BSで放送していた「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」をチラ見。きのくに線や紀州鉄道に乗り、和歌山を旅しながら呑んでいるではありませんか。

すぐに影響される僕、きのくに線の各停に乗って印南(いなみ)駅へ行くことを決意しました。もちろん缶ビール片手に。印南に決めた理由は、大嫌いなカエルがいるから。怖いもの見たさで、寄ってみようっと。  

いや~、個人的には大変でしたわ。駅のベンチにカエル(もちろんオブジェ)が座っていて、ビビりながらスマホで撮影。駅を出ると、カエル橋の大きなカエルがこっちを見ているし。さらに酔いが回った(いい意味で)電車旅になりました。

(2023年6月号)

【第22回】
聖地に登る
高野山ケーブルカーの客車はスイス製

先に謝っておきます。鉄道のコラムなのに、車で行った現地報告ですので。大雨の影響を受け、鉄道が運休していたから…。

高野山ケーブルは、南海高野線の極楽橋駅と高野山駅を結ぶ路線。1930年に開通し、90年以上の歴史があります。僕が最後に乗ったのは10年ほど前だから、南海電鉄のホームページによると3代目ケーブルカー。そのときの印象は、急斜面をグイ~ンっと勢いよく。乗っている時間は5分ほどながら、標高530mの極楽橋駅から867mの高野山駅まで一気に登りましたね。  

高野山駅には、4代目となる新型ケーブルカーの誕生を記念した大きなパネルが設置され、製造から搬入までの流れが紹介されています。客車部分を製造したのは、スイスのキャビンメーカー(全体は日本の会社)。アルプス山脈を登っていそうなヨーロッパ車両の雰囲気を漂わす外観。客室内は木目調の装飾が施され、和洋折衷のデザインは高野山への期待感を醸成しています(との説明文)。乗りたかった!

(2023年7月号)

【第23回】
今年で開業111年の加太線、
222年にはどうなっているの?

南海グループのブランドスローガンは、「“なんかいいね”があふれてる」。梅雨の中休みの日曜、いいねを見つけようと、加太線に乗ってきました。加太や磯ノ浦に行くと思われる家族連れがちらほら。特に混雑もなく、終点加太までのどかなプチ鉄道旅。

加太線は今年(2023年)、開業111年。和歌山市北部の住宅街を走る住民の貴重な足ですが、ローカル線の宿命か、年々利用者が減っているそう。このじり貧状態を打破しようと、「めでたいでんしゃ」が2016年に登場。「加太さかな線」の愛称も付けられ、通勤・通学路線から観光路線へのイメージチェンジを図っています。  

30年ほど前、友ヶ島に橋を架け、淡路島から徳島まで道路と鉄道を通す構想があったとか。加太から友ヶ島に橋げたを架けて、淡路島に渡れるようにするんだって。加太線開業222年には、和歌山市駅で「まもなく4番線から、特急あわじ四国号、徳島行きが発車いたしま~す。途中停車駅は、加太、友ヶ島、南あわじ市、鳴門です」なんてアナウンスが流れていたりして。構想というよりは、完全に妄想だなこりゃ。

(2023年8月号)

【第24回】
寂しくなった路線に
自動運転仕様の最新電車が走る!?

南海和歌山市駅と和歌山港駅の約3kmを結ぶ和歌山港線。徳島の人が関西に出かける際、大鳴門橋と明石海峡大橋が開通するまでは、「南海四国ライン」と呼ばれる徳島港~和歌山港~なんば駅がメインの移動ルートでした。

当時、徳島港から和歌山港までの高速船が約1時間、和歌山港から「特急四国号」でなんばまで1時間。乗り換え時間を含めても2時間少々で到着したわけです。現在、徳島駅前から高速バスで梅田まで約2時間20分だから、そんなに変わりません。

船は欠航のリスクもあり、徳島の人は高速バスを利用するのが普通。和歌山港線の運行本数は現在、1日10往復程度という寂しい状況なのですが、先日衝撃のニュースが発表されました。この和歌山港線で自動運転の実証実験を行うとか。将来の運転士不足を見越した取り組みで、忘れ去られた(失礼!)路線が一躍、最先端の仕組みが導入されるんです。これは一度乗ってみなければ。

※編集部注…写真は2023年11月に撮影しましたので、LiSM9月号の掲載写真とは異なります

(2023年9月号)

Writing:東和歌 天空(ひがしわか てんくう)
乗り鉄でも撮り鉄でもなく、時刻表を眺めての妄想が極上。

【後編】へつづく coming soon