
【和歌山市】「珈琲もくれん」わかやまじゃんじゃん横丁で長年愛される喫茶店の物語
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レトロなお店が並ぶ和歌山市島崎町のわかやまじゃんじゃん横丁に、「珈琲もくれん」は店を構えます。ネルドリップで丁寧に淹れられた同店の香り高いコーヒーのファンは多く、和歌山のカフェ好きなら誰もが知っているほど。同店の顔であるマスターの村上洋一さんに、お店を始めたきっかけやコーヒーへのこだわりなどお話を伺いました。
わかやまじゃんじゃん横丁の再興と
「珈琲もくれん」のはじまり

和歌山市島崎町、昭和の空気を色濃く残す「わかやまじゃんじゃん横丁」。
1955年に大阪・新世界のジャンジャン横丁(南陽通商店街)をモデルに作られたこの場所には、かつて様々なお店が並び活気づいていましたが、1970年代頃に一時衰退。その後、建物の風情はそのままにリノベーション(当時はあまり聞き馴染みのない言葉で、全国的にも事例は少なかったそうです)し、再び賑わいを取り戻しました。

そんな歴史のあるわかやまじゃんじゃん横丁の一角に、1999年、自家焙煎喫茶「珈琲もくれん」が誕生しました。


同店を切り盛りするのは村上洋一さん。朗らかな性格と、物腰柔らかな口調で語られるウィットに富んだ会話。そのあたたかな人柄にファンも多い。
村上さんは大分県の出身で、元々は木工の工場で働いた後に各地を渡り歩く生活をしており、コーヒーとはほぼ無縁だったそう。そんなある日、「わかやまじゃんじゃん横丁の興しをしている人が、喫茶店をしてくれる人を探している」と知人から声を掛けられたのが約30年前。その一言がきっかけで同店を始めることに。
「ちょうどその頃 “ぶらぶら”していたんです(笑)。北海道の牧場で仕事をするか、九州に帰ろうかと考えていたところで。だからお話をいただいた時にじゃあやってみようか、と。それが始まりでした」と村上さん。
福岡の名店で出会ったネルドリップ

驚くことに、コーヒーの淹れ方を教わったのは開店のわずか3日前。当時はサイフォン(フラスコ内の水を沸騰させ、蒸気圧を利用してお湯を移動させてコーヒーを抽出する方法)でコーヒーを淹れるスタイルだったそうです。
開店し2、3か月後のある日、お客さんに「ここのコーヒーと似たコーヒーを福岡の『珈琲美美』という喫茶店で飲んだ」と言われたことがきっかけで、「珈琲美美」を訪ねることに。そこで出会ったのが、現在の味の基礎となる“ネルドリップ”(布製のフィルターでコーヒーをゆっくり抽出する昔ながらの方法)でした。
「実際に飲んでみたら、深煎りなところは共通しているけれども全然味が違うから、どこが似ているかわからなくて(笑)。でもそのお客さんはどこを似ていると感じたんだろう?と疑問に思ったことがきっかけで、コーヒーのことをもっと知りたいと思いました」と村上さん。
和歌山に戻ってすぐネルドリップを取り入れたものの、お客さんからはあまり評判が良くなく、サイフォンに戻したり、ペーパードリップに切り替えたりと試行錯誤の日々が続いたそうです。今ではネルドリップのイメージが強い同店ですが、このスタイルがしっかりと定着したのはここ10年ほど。理想のコーヒーを求めて探り続けながら、自分だけの世界観を少しずつ形にしていきました。

ペーパードリップより目が粗いネルドリップで淹れたコーヒーは、より多くの成分が抽出されるため、コーヒーの持つ“いろんな味”が立ち上がりやすいのが特徴。そのため、飲んだ人が自分の口の中で「これが好き」という風味を見つけやすいのが魅力だそう。
昨今「○○で淹れたコーヒーはこういう味だ」という理論がSNS等に溢れていますが、村上さんは「誰かが決めた固定概念にとらわれずに、自分の“おいしい”とか“あまり好きじゃない”と思う気持ちを大切にしてほしいです」と力説します。
コーヒーの魅力は
“地球にいることを感じられる”こと

村上さんが思うコーヒーの魅力を尋ねると、「変な言い方になるんですけど、“地球にいることを感じられる”ことですかね。コーヒーのドリップは、熱と重力というシンプルな力で成り立つものなんですよ。お湯を注ぎ、自然に落ちていくのをただ待つしかない。どれだけ急いでも重力の働き以上には落ちないから。その瞬間に自分が『地球の上に立っている』って感じます。自分がコントロールできるのは湯量くらいで、あとは委ねるしかない。“成り行き”です」と穏やかな笑顔で答えてくれました。
村上さんの世界観が詰まった深煎りの「もくれんブレンド」は、穏やかで深みのある旨みでファンも多い。

コーヒーと併せていただきたいスイーツ類も充実。
「クリーム珈琲琥珀」は、自家焙煎のコーヒーを使ったコーヒーゼリーとマスカルポーネチーズを使ったイタリアンプリンに、バニラアイスと生クリーム、シナモンクッキーを添えており、ほろ苦さと甘味が絶妙な逸品です。

その他、自家製のケーキや「cookie and muffin8739」さんのハンドメイドクッキー、軽食なども。
ふとした瞬間に思い出してもらえる一杯を

「もちろんそれぞれのお店によって考え方は変わると思いますが、僕は喫茶店のコーヒーは脇役だと思っています。たとえば待ち合わせとか仕事の用事がある時に喫茶店に来る。その時に横に置いてあるコーヒーは、個性が際立っているよりも、飲みやすい方がいいと思っていて。だけど、ふとした瞬間に『そういえばもくれんのコーヒー、おいしかったよね』って思い出してもらえたら嬉しいかな」と村上さん。
今日も「珈琲もくれん」では、村上さんの優しい笑顔とネルドリップで丁寧に淹れた香り高い一杯が、訪れる人をあたたかく迎えてくれます。
| 名称 | 珈琲もくれん |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市島崎町3-27 |
| 電話番号 | 073-427-4200 |
| 営業時間 | 10:00~22:00(OS21:30) |
| 定休日 | 水曜 |
| 駐車場 | あり(わかやまじゃんじゃん横丁駐車場) |
| web | http://master.tank.jp/mokuren/ |
| @coffee_mokuren |























和歌山市出身・在住のフリーライター。おいしいものをこよなく愛し、ロカルわかやまではグルメ記事ばかりを担当。生まれ育った和歌山の‟素敵”を、もっと発信していきたいです。多趣味で、カフェ巡り・カメラ・ミニチュアフード作り・読書・映画鑑賞などが好き。