
【和歌山市出身】長岡禎仁(JRA騎手)スペシャルインタビュー
イチオシの記事
リビング和歌山年末年始号(2025年12月27日発行/和歌山リビング新聞社)に掲載した、長岡禎仁(ながおか よしひと)騎手のインタビュー。紙面では紹介できなかった長岡騎手のデビューからの歩みを綴ります。

競馬界をテーマにしたTBS系ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」では、馬に携わる人たちの熱い思いが描かれ、視聴者に多くの感動を与えてくれました。
何かと注目を浴びる競馬界の中で、和歌山県出身者では唯一の現役JRA(日本中央競馬会)ジョッキーとして奮闘する長岡禎仁さん。2025年11月27日に電話で、通算100勝達成のことや2026年の抱負などを話してもらいました。
まずは、苦労を重ねた末に達成した通算100勝までの歩みから。
※過去のインタビュー内容も含んでいます

中学時代は負けず嫌いの
テニスプレイヤー
和歌山市内の中学校に通っていた長岡さんはソフトテニス部に入部し、副キャプテンとして活躍しました。当時、顧問として指導に当たった神崎信彦さんの話によると、「運動神経が良く、とにかく負けず嫌いでガッツがあった」とのこと。
先生からの教えは、今の僕の精神面の柱の部分を作っていただきました。
と、騎手になった今も中学時代の教えが活かされていると話します。
2006年11月12日、中学1年だった長岡さんは家族に連れられて京都競馬場へ。G1レース(=競馬の最も高いグレードに格付けされるレース)のエリザベス女王杯(優勝馬/フサイチパンドラ)が行われたこの日の競馬に感動し、騎手を目指すことに。乗馬クラブ「グリーンオアシス」(和歌山市平井)に通いはじめ、中学校での勉学・テニスの部活、そして乗馬と“三刀流”の生活を送ることになります。
乗馬クラブで腕を磨き、超難関のJRA競馬学校の試験に合格。騎手を志す若者は、家族や親類が競馬関係者ということが多いのですが、長岡さんは競馬界とは全く関係のない一般社会から飛びこみました。何かと勝手の違う点も多かったことでしょう。そこは負けず嫌いの長岡さん。競馬学校卒業時には、成績優秀者に贈られる「アイルランド特別大使賞」を受賞するまでに成長しました。
JRAの騎手は、栗東トレーニングセンター(滋賀県)、もしくは美浦(=みほ)トレーニングセンター(茨城県)のいずれかに所属します。和歌山出身の長岡さんは栗東の厩舎に所属するかと思いきや…
自分を甘やかさないためにも、あえて和歌山から離れた美浦の小島茂之厩舎に所属させてもらうことになりました。
競馬学校を卒業した長岡さんは、関東の地で念願の騎手デビュー!
度重なるケガを乗り越えて
13年目で通算100勝を達成
2012年3月3日に初騎乗。同年12月9日、初勝利。1年目はこの1勝にとどまりましたが、2年目からは着実に勝ち星を伸ばし始めました。ところが、度重なるケガ(2017年には落馬事故で腎臓破裂)によって満足に乗れない時期もあり、思うように勝ち星が伸びず…。
2019年5月からは心機一転、栗東の高橋亮厩舎に移籍。レースに臨む各厩舎の調教を積極的に行い、騎乗技術の評価が上がり、信頼を勝ち得ます。
長岡騎手が一躍有名になったのは、2020年2月の「フェブラリーステークス」(G1レース)。出走馬16頭中、最低の16番人気だったケイティブレイブに騎乗。これがG1初騎乗ながら2着に好走し、多くの競馬ファンをあっと言わせました。
同年8月の「小倉記念」(G3)で、アールスターに騎乗し、重賞初勝利。狭いインコースを突いて先頭に躍り出た、度胸満点の騎乗ぶりが印象的でした。

2024年2月には、フェブラリーステークスで実力馬のガイアフォースに騎乗。初のG1制覇を目指しましたが、惜しくも2着。

続く同年6月の安田記念(G1)でも4着と、悲願のG1タイトルにはあと一歩届かず…。

同年11月2日、京都競馬場でストップヤーニングに騎乗し、通算100勝を達成。13年目にして大台に達したことは各メディアで取り上げられ、“ケガを乗り越えた苦労人”との記事も見受けられました。ちなみに馬名のストップヤーニングの意味は、「憧れるのをやめましょう」。あの大谷選手がWBCで日本代表メンバーに伝えた言葉ですね。
100勝を達成した感想を、電話インタビューではこう答えてくれました。
大きなケガもあり、しんどくて辛い思いもいっぱいしました。ケガをするたびに、たくさんの人に支えられ、応援してもらい、もう一度がんばろうと奮い立って100勝を達成することができました。感謝の気持でいっぱいです。
2025年は勝ち星が伸びず悔しい思い
2026年はもっと勝ちたい!
2024年は14勝。ところが2025年は、12月21日終了時で9勝と、昨年を下回っています。
2026年は、もっと勝ちたいですね。重賞レースや注目度の高いG1レースの騎乗機会を与えてもらえるよう、がんばりたいと思います。
ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」の放送もあり、いままで競馬に興味がなかった人たちも関心を持つようになりました。現役JRAジョッキーとして、注目してもらいたい点について伺うと…
ドラマでは、1頭の馬に対して、たくさんの人が携わっている姿が表現されています。レースを見て感動していただき、陰ながら競馬をサポートしてくれている多くの人の存在を知ってもらえればと思います。
また、僕たち騎手はいろんな思いを背負って馬に乗っています。その思いも感じ取ってもらえれば。
1頭の馬と1人の騎手だけで走っているわけではありません。無事にレースに向かい、無事にレースを終え、そして次を目指すまで、多くの人々の力が結集されているのです。
ドラマを見た若い子たちが、競馬界に入ってくれるようになれば嬉しいですね。
最後に、これを読んでいる和歌山の皆さんにメッセージ。
和歌山出身では唯一の現役ジョッキーなので、もっとがんばって、皆さんに自慢してもらえる存在になりたいですね。
「さらに活躍すれば、和歌山の観光大使になれるんじゃないですか?」と返しましたが、電話口の向こうで苦笑してかも…。
ちなみに、和歌山に帰ってきたら大好きなラーメン屋さんに行くそうで、お気に入りは「丸田屋」「丸三」だそうです。
【プロフィール】
ながおか よしひと★1993年、和歌山市生まれ。中学時代はソフトテニス部で活躍。京都競馬場で観戦したエリザベス女王杯(G1レース)に感銘を受け、騎手を志す。JRA競馬学校に入学し、2012年デビュー。2025年12月21日現在、通算112勝。166cm・47kg(JRA公式HPより)。























和歌山の麺歴史に詳しい、創業40年近くのエディター。嫌いな質問は、「おすすめのラーメン店を教えてください」。もし聞かれたら、「サッポロ一番みそラーメンが好きです」と肩透かし。