和歌山県海南市にある冷水浦(しみずうら)。冷水浦は小さな漁村で、現在は住人の高齢化により、空き家が徐々に増えています。そこに冷水浦唯一の飲食店「チャイとコーヒーとクラフトビール」(以下、「CCC」)が2022年12月にオープンしました。同店のオープンは冷水浦を再生させる「RE SHIMIZU-URA PROJECT」の一環とのこと。CCC店主でプロジェクト発起人の、いとうともひささんにお話をうかがいました。
冷水浦唯一の飲食店
JR冷水浦駅から徒歩3分。路地を通り抜けた先に見えてくるのは、白い石造りの古民家。
ここはカフェ・ビアバー「チャイとコーヒーとクラフトビール」。冷水浦唯一の飲食店です。
店内はゆったりとくつろげるあたたかみのある雰囲気。木の香りが落ち着きます。2023年7月現在は1階のスペースのみですが、2階席も近いうちにオープン予定とのこと。
コミュニティの憩いの場所を作りたかった
CCC店主のいとうともひささん。本職はなんと大工さん!店を作ったきっかけや、今後の展望などを伺いました。
――いとうさんは大阪出身とか。なぜ冷水浦にお店を開こうと思ったのですか?
いとう:出身は大阪なんですが、大工をしながら日本各地を転々としていて、2017年に初めて冷水浦を訪れました。冷水浦は生まれも育ちも冷水浦という人が多く、だからみんなもう家族というか、親戚というか……繋がりの強さに惹かれ、移住を決意しました。
それから友人たちと「RE SHIMIZU-URA PROJECT」を立ち上げました。このプロジェクトは、空き家を購入して希望者に改修の技術をレクチャーする「職人のいる集落のホームセンターづくり」というコンセプトで始まったのですが、内容が当初とは変わってきていて。
1軒の民家だけを再生するのではなく、工房があって、手芸店があって、飲食店があって……そんな風に冷水浦が食住一体の町にもう1度生まれ変わったら面白いかな、という計画にシフトしました。そのためには大工だけしていても町が変わらないと思い、飲食業は素人だったのですが、CCCを開こうと思いました。
――RE SHIMIZU-URA PROJECTの一環としてのCCCなのですね。
いとう:飲食店を開くことで、コミュニティの憩いの場所を作りたかったんです。冷水浦には飲食店が一つもなくて……昔から井戸端会議はしていたのですが、冷水浦の人がご高齢になってきて井戸端でずっと立ち話をするのもしんどくなってきて、座ってお茶でも飲めるような場所があれば、また“井戸端会議”をはじめるんじゃないかなと。思惑通り、開店日には地域のおばあちゃんたちがグループで来て女子会をしています。
「かくれんぼが楽しい土地はいい土地」。冷水浦の凸凹感、とてもワクワクします。
時間をかけてじっくりと作るメニュー
――どうして「チャイとコーヒーとクラフトビール」がテーマなのですか?
いとう:じっくりと手をかけて作れるものがいいな、と思って。料理にはレシピがあって作り方を教えてもらったら誰でも作れる。「これをこれぐらいの量で混ぜたらこういう味になる」ということを知ったら、家でも作れるようになるわけじゃないですか。
でも今は時間をかけてじっくりと、という時代ではない。それも選択肢の一つで悪いわけではないのですが、おいしいものを自分で作るというのも同じくらい楽しいことなので。
――メニューのこだわりは?
いとう:チャイの味は、季節によっても気分によっても変わるし、スパイスの産地で味がガラリと変わるわけじゃないですか。だから今も試行錯誤しています。半年前に来た人と今来た人だったら、随分味が変わっていると感じると思うんですよ。でもそれはこの店が育っているというか……それが面白さの1つかなと思っています。
また、珈琲豆に関しては5種類、そのときおいしいものを提供するようにしています。クラフトビールは毎月少しずつラインナップが変わっています。
「アイスチャイ」(600円)と「野田商店ひじきのシフォンケーキ」(400円・ドリンクとセットで200円引き)をいただきました。チャイはスパイスが効いていて香り高く、濃厚なのに後味さっぱりでクセになります。「ひじきシフォンケーキ」は海南市の洋菓子屋「3時のかんぶつ屋さん」のケーキ。ふわっふわの食感と優しい味にホッとします。
それぞれにとって
居心地のいい場所になるように
――お客さんの反応はいかがですか?
いとう:最初は冷水浦の人が多かったんですけど、最近は外部の方も結構来られています。今日も「RE SHIMIZU-URA PROJECT」が気になるといって来られた方もいて。「廃材で作った窓ガラスの写真をインスタで見て来ました」という人もいます。
解体した時に出た廃材を利用して作られた窓ガラス。日に照らされるとキラキラして本当に綺麗!
いとう:お客さんたちの距離が近いのも印象的で、市内から来られたお客さんと地元の漁師さんが話が盛り上がって、とても楽しかったと言ってもらえたこともあります。もちろん自分のペースで楽しみたいお客さんは自分のペースで楽しんでもらってもいいし、それぞれにとって居心地のいい場所になるように心掛けています。
誰のためにどういうものを作りたいか
――今後の展望は?
いとう:今後は会員証で一人ひとりに合わせたレシピの管理をしたりとか……均一なサービスではなく、その人のことを想ってのサービスをしていきたいです。「RE SHIMIZU-URA PROJECT」に関しても、「誰のためにどういうものを作りたいか」というのを考えて作れると、すごい面白い集落になりそうだなと思います。
会員証、私も作っていただきました(笑)
名称 | チャイとコーヒーとクラフトビール |
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所在地 | 和歌山県海南市冷水354 |
営業時間 | WEBサイトをご確認ください |
定休日 | 月~木曜(不定休) |
駐車場 | あり(駐車場は395) |
web | https://shimizuura.jp/ |
@chaicoffeecraftbeer |
※掲載各店の判断により、営業形態や営業時間、メニュー等が変更されている場合があります
和歌山市出身・在住のフリーライター。おいしいものをこよなく愛し、ロカルわかやまではグルメ記事ばかりを担当。生まれ育った和歌山の‟素敵”を、もっと発信していきたいです。多趣味で、カフェ巡り・カメラ・ミニチュアフード作り・読書・映画鑑賞などが好き。