映像に思いを 『海難1890』田中監督が講演
現在大ヒット公開中の、串本町を舞台にした日本トルコ合作映画『海難1890』の田中光敏監督の講演会が28日、和歌山市栄谷の和歌山大学で開かれた。「観光プロモーションビデオで描く地方の魅力」をテーマに、田中監督は「映像がメーンではなく、主人公は、あくまで人。作品を支える人や映像を見て動き出す人がいることで、まちがにぎやかになったり、何かを発信したりできる」と話した。
田中監督が観光PR映像を手掛けた福井県の「あわら市」と同市観光協会が主催し、大学生や一般約300人が参加した。
田中監督は福井県を舞台にした映画『サクラサク』(さだまさし原作)の製作が縁で、昨年、2年を費やして市民参加型の観光PRムービー「AWARA HAPPY FILM」(短編4作)を完成させた。全国からシナリオを公募し、市民らが出演者や撮影スタッフとして関わった作品は、新しい観光発信のモデルとして注目されている。
講演は、これら4作品を上映しながら進行。まちに溶け込み、市民と一緒になって作り上げた映像を振り返りながら「作品に関わった人たちがまちを好きになり、発見した素晴らしいものを周りの人や外の人に伝えてほしいと思いながら現場に立っていた」と話した。
あわら市の橋本達也市長、同大経済学部生で映像製作をする吉永鈴さんとのトークセッションもあり、田中監督は「映像づくりで大切にしているのは、そこにどういう思いを込めるか」と力説。世界情勢が緊迫する中で撮影された、『海難1890』のトルコでのラストシーンの秘話を明かし「思いによってつながり、物事は動いていく。映画化の可能性は1%、ゼロに近いと思ったが、周りの人に伝えることから始めた。一人が声を発信すること、人と人が会うことの意味は大きく、受け止めた人のエネルギーが情報として広がっていく」とメッセージを伝えた。