「旅と宗教の文化遺産」テーマにシンポ

和歌山の旅と宗教文化について多様な発表がなされた

和歌山の「旅と宗教の文化遺産」をテーマとしたシンポジウムが14日、和歌山市吹上の県立博物館で開かれ、高野・熊野をはじめとする聖地を擁し、古くから巡礼の旅が行われてきた和歌山の宗教文化について研究者らが発表した。

県文化遺産活性化委員会(会長=水上勇人県文化遺産課長)が主催した。

同課副主査の蘇理剛志さんはシンポジウムの趣旨説明で、和歌山が古くから宗教的な旅への憧れや旅の想像力をかき立てられる地域だったことを説明。しかし、明治の廃仏毀釈や修験道の廃止などにより紀州の旅の文化は荒廃し、鉄道の普及や車社会の進展により、古い街道沿いに住む人々に息づいてきた旅人との交流やもてなしなどの文化も衰退してきたと指摘した。世界遺産登録後、再び古道を歩く人々が増加している現状などを踏まえ、調査・研究や旅の追体験などにより、和歌山の「旅と宗教の文化遺産」をつなぎ直すことの重要性を強調した。

龍谷大学名誉教授で県文化財保護審議会委員の須藤護さんは、和歌山の宗教文化の特色として、山と海それぞれに暮らす人々の信仰があったことを挙げた。

山の信仰については、旅人に絶景と称されるような景観は、そこに住む人々にとっては大きな障害となることが多く、変化に富み人の侵入を阻むような和歌山の景観は、修行の場として、また亡くなった人の魂が還っていく場として、精神文化の面においても大きな意味を持っていたと指摘。

海の信仰については、漁業や製塩、海運などをなりわいとした海人の生活を物語る、海にまつわる神社が県内には数多く残されており、紀州の漁民が進出した房総半島に紀伊半島と共通した地名が見られることから、祭神と地名の分布から海人の移動をある程度把握することができると説明した。

聖護院史料研究所客員研究員の有安美加さんは「淡島信仰と葛城修験」と題して発表。和歌山市加太の淡嶋神社を発祥として全国に広がった、主に安産と婦人病の平癒、裁縫上達、縁結びなどの民間信仰について、史料を基に歴史や展開を示し、女性性の肯定や無差別の直接救済などの思想的特徴を解説した。

この他、登壇者と市立博物館学芸員の佐藤顕さんを交えたパネルディスカッションも行われた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。