
和歌山の衛星を宇宙に 県内6社ら出資のWALL
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民間ロケット射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)を擁する県内で超小型人工衛星を製造し、宇宙技術の活用によって地域課題の解決を図ろうと、東京の宇宙ベンチャー企業と県内の多業種6社が共同出資し、㈱WALL(和歌山市、有井安仁社長)を設立した。和歌山大学と共同研究を行い、2028年に同射場からの人工衛星打ち上げを目指す。
【写真】超小型人工衛星のモデルの前で語らう有井社長㊧、秋山教授㊥ら
WALLは、いずれも和歌山市や海南市に本社や拠点を置く㈱PLUS SOCIAL、㈱タカショーデジテック、㈱共栄テクシード、三木理研工業㈱、ノーリツプレシジョン㈱、㈱BEEの6社と、超小型人工衛星の設計・製作・運用を行う㈱アークエッジ・スペース(東京都)が出資し、10月30日に設立した。
国内の人工衛星開発の多くは東京に集中し、地方では専門的な技術や知識へのアクセス、人材の確保などが難しいのが現状。しかし県内では、スペースワン㈱が小型ロケット「カイロス」による商業宇宙輸送サービスに挑戦し、人工衛星の製造から打ち上げまでを一体的に行うことが可能な地域となっている。
WALLでは、アークエッジ・スペースが提供する技術やノウハウを学び、共同で人工衛星を製造することを通して、将来的には、県内企業が人材を育て、宇宙技術を生かした産業に取り組むことを視野に入れている。
和歌山大学は、人工衛星の製造、打ち上げ、運用の実績を持ち、衛星データの受信や活用が可能な口径12㍍の大型パラボラアンテナを備えている。同大イノベーション・イニシアティブ基幹の秋山演亮教授は、内閣府委員会の座長として宇宙人材スキル標準の策定を主導してきた他、衛星利用も可能な広域通信網を活用し、河川の水位や雨量など自然災害に関するデータの取得、シカ罠の遠隔監視など、宇宙技術を実社会の課題解決に結びつける研究を続けている。
共同研究により、宇宙技術や衛星データを生かし、防災・減災や獣害対策、インフラの維持などの地域課題に対応できる技術を地元に根付かせ、実践的に活用できる人材の育成などを図る。
12月22日には有井社長らが和歌山大で記者会見を行った。
秋山教授は、ロケット射場がある和歌山で、これから必要とされる宇宙インフラの担い手に県民がなっていくことが重要と指摘。有井社長は「県外に人口が流出していく状況にあって、地元に必要とされる、これから成長していく仕事をつくりたい。宇宙を活用して和歌山を豊かにしたい」と意気込みを話した。
































