和歌山市西小二里の㈱吉田(吉田友之代表取締役)は、市内で初めて地ビールの製造免許を取得し、経営する六番丁の居酒屋「紀州応援酒場三代目」で1日から、本格的な製造と販売を開始した。夏本番が近づき、冷たいビールがおいしくなる季節。県都の新たな名物としても期待が高まる。
同社は酒小売店、市役所内のレストラン「十四階農園」などを展開している。
吉田社長(46)は居酒屋の客の多くがビールを注文する際に「普通の生」と言うことに着目。酒造メーカー大手4社のビールだけでなく、個性的なビールを提供できたら面白いのではないかと、まだ和歌山市にはなかった地ビールの製造を思い立った。
祖父の代から続く酒小売店で育った吉田社長には、幼少のころから身に付いた酒の知識や、20代で日本酒や焼酎の醸造を学んだ経験がある。地ビールの製造免許申請に当たっては、税務署から酒造りの技術、設備、生産量、売り方、販売根拠など多岐にわたる煩雑な審査があったが、自らの経験を生かしてこれらをクリア。ことしの3月11日、約1年で免許取得に至った。
吉田社長が完成させた地ビールは「バイチェン」と呼ばれる白ビールで、軽い飲み口で苦味が少なく、フルーティーな味わいが特長。ビールが苦手な人にも飲みやすいとのことで、試験的な販売の段階から客の好評を得ており、「リピート率は高いです」と手応えを感じている。150㍑の発酵タンク2基を備え、月間900㍑の生産体制を整えた。
平成6年の酒税法改正により、年間最低製造量が2000㌔㍑から60㌔㍑に引き下げられ、全国各地に少量生産の地ビールが誕生。呼称に明確な定義はなく、近年はクラフト(手作り)ビールと呼ばれることも多い。
吉田社長は「各家庭で材料や調味を自由に変えられる“おかんのカレー”のように、地ビールを作りたい」と考えている。ビールの苦味や香り、泡に重要な働きをするホップは、県内でも高野山や有田川町など標高の高い地域で栽培は可能。将来的には、現在使用している英国産ホップを県産に変え、県産の水を使用することなども検討し、より和歌山の発展につながることを願っている。
来店した観光客には必ず和歌山城などをPRするという吉田社長は「和歌山の素晴らしい文化や自然、地元の人がもっと街に出て楽しみ、地ビールも味わってほしい」と話している。
※文中、会社名、社長名の吉は土の下に口