日々の食事と密接に関連しているといわれる脳卒中や心筋梗塞、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防につなげるため、「ヘルシー健康料理」の開発と提供に取り組んでいるホテルアバローム紀の国(和歌山市湊通丁北、藤田裕司支配人)は、8回目のメニュー改正を行い、9月1日から提供を開始する。
同ホテルは、低カロリー、減塩で体に優しく、おいしい料理を提供し、利用者に健康でおしゃれな外食を楽しんでもらおうと、平成21年秋から健康メニューの開発を開始。料理の監修は、日本高血圧協会県支部長で県立医科大学名誉教授の有田幹雄さんが当初から務め、改正を行ってきた。
新メニューの試食会がこのほど、同ホテル内のレストラン「ガーデンテラス・リーフ」で開かれ、県立医大や県教育委員会、報道関係者ら約30人が出席。県産の肉や魚、野菜、フルーツなどをふんだんに使った料理の数々が並べられた。
藤田支配人は、これまで試行錯誤を繰り返してきた取り組みを振り返り、「健康な料理で、かつホテル提供ならではの究極のおいしさを求めてきたメニューの開発は、険しい道でした」と苦労をのぞかせながらも、今回のメニューに自信の笑顔を見せた。
有田名誉教授は、新メニューの中で特に「みかんどり胸肉のローストと生石豊卵の目玉焼きサラダ仕立て」を中心とした朝食メニューを取り上げ、高く評価。潮汁や豚肉、魚の一品などを加えたメニュー全体に含まれる塩分は1・3㌘にとどまり、通常はみそ汁と漬物だけで1・5㌘ほどになる塩分を効果的に抑えながら、おいしさを実現したという。
新メニューの創意工夫について、和食担当の佐藤喜久一郎総料理長は「調味料の味が食材に入りやすいよう、豆やジャガイモは真空の袋に入れて蒸しました」、洋食担当の秦祥茂料理長は「香ばしく香りをつけたり、スパイスやナッツ、オイルを使用したりすることで、低塩分の物足りなさを補いました」などとそれぞれ説明した。
また、家庭で無理なく減塩する工夫として、佐藤料理長は「天然のだしを使い、しょう油やソースなどは料理に直接かけず、小皿に入れて添えてください」と紹介した。
参加した県教育委員会健康体育課指導主事の鎌田敦子さんは「全く違和感なく食べることができました。給食ではアレルギー問題にも配慮しながら、香味野菜を使うなどのノウハウを生かして、素材のおいしさを子どもたちに伝えたい」。県立医大小児科の鈴木啓之教授は、ファストフードなどに親しんでいる現代の子どもは、適正な塩分量の食事を嫌う傾向にあることを指摘し、「子どもをうす味に慣れさせるには、家庭で作ったものを食べることが必要と思われる。減塩食を若い世代にどうアピールしていくべきか考えていきたい」と話していた。