交流育む商店街 屋形大通り「つながり庵」

毎月の清掃活動を続ける「つながり庵」の店主ら

和歌山城の南東に位置する和歌山市の「屋形大通り商店街」は、高齢者が多い地元のにぎわい再生に向け、あいさつや清掃活動などに力を入れつつ、各店舗が住民の困り事の相談窓口となる「つながり庵」の活動を平成28年1月に本格的に始めてから1年余りが経過した。「20年後に和歌山市で一番住みやすい街」を目指し、商店の活性化や住民のつながりが生まれ、地元小学校でのイベント開催につながるなどの成果を上げている。
同商店街が位置する広瀬地区は、65歳以上の高齢化率が34%に達し、市の平均高齢化率27%を大きく上回っている。地域の人と人とのつながりを商店街が中心になって担おうというプロジェクトが商店街有志により始まり、平成27年6月には店舗の場所や連絡先を記した商店街の手書きマップを作り、28年1月から相談窓口を開始した。
活動に目を留めた和歌山商工会議所は28年9月、地域経済の担い手として積極的に活動する商店街や小規模事業者を支援している「経営発達支援計画」との連携を同商店街に提案。助成を受けてマップをバージョンアップし、店舗の情報をより見やすくまとめ、つながり庵の取り組みを紹介したものを作成した。
さらに同年10月には、同計画の「魅力ある個店創出事業」を活用し、商店街内の21店舗から選ばれた2店舗に対し、同商議所と中小企業診断士、社会保険労務士などの専門家を交えて、店主が抱える経営課題について5回にわたる重点指導を行った。
つながり庵の代表を務め、重点指導を受けた「わいんでぐち」を営む出口隆之助さん(57)は、ホームページ作成などについて相談し、「『売る』から『見せる』に変えるように、とのアドバイスが大変参考になった」と話す。
ワインの豊富な品ぞろえを特長とする同店は、約20年にわたり無料のワイン試飲回を定期的に開き、ワインの豊富な知識を持つシニアソムリエールの資格を妻の美穂さん(51)が取得するなどして、特色ある店づくりに努めてきた。
「お客さんが、さまざまなワインを味わい、口に合うものを見つけていくワイン文化を根付かせたい」と願う出口さんは、指導を生かして店と商店街の発展にさらに力を入れようと意気込んでいる。
指導を受けたもう一店は、開店2年目の「昭和レトロ雑貨と喫茶 クレヨン」。趣のある花柄が描かれたポットやホーローの鍋など、昭和のレトロ雑貨を懐かしみながら、店主や常連客との会話を楽しめる店として人気を呼んでいる。
オーナーの前田知己さん(50)は平成25年、有田川町の金物屋の閉店に伴い、知人から倉庫に大量にあった在庫品の処分を頼まれた。大阪府吹田市の万博記念公園のイベントで販売すると飛ぶように売れたことから、昭和レトロ雑貨の人気を確信し、脱サラして店を開くことを決意。レトロ雑貨の雰囲気に合う古民家風の物件を探す中で、同商店街内に、今では少なくなった土壁が残っている現在の店を見つけた。
同商議所の経営指導では、フェイスブックの効果的な利用法を教わり、それまで「イイネ」約130件だった店の反響が、6日間で「リーチ」が約8000件になるなど、認知度を大きく高めることができた。
前田さんは、開店間もない頃、認知症の来店者が雑貨を目にした途端に生き生きと思い出話を始めた体験が強く印象に残っている。「優しい目で雑貨を見つめているお客さんが多い」と話し、懐かしい趣のある雑貨には、人の心を和ませる効果があると感じている。今後は、認知症をケアしている人が集い、くつろげるカフェにしたいと願っている。
各店の活性化や、相談を通じた住民との交流に加え、同商議所との連携がきっかけとなり、2月には広瀬小学校で「おもちまきと豆まきイベント」を開催。地域から米の寄付があり、商店街内の餅屋も協力を申し出るなど、商店街と地域を盛り上げようという機運が高まった。
つながり庵の店主らは毎月1回、同商店街の将来について「クレヨン」での交流会で語り合う。通学する小学生へのあいさつ運動や、毎月の早朝の清掃活動などにも継続して力を入れていく。
出口さんらは「屋形に行ったら何かあるんちゃう?と思ってもらえる商店街にしたい」「商店街主体の小学校とのイベントをたくさん開いて楽しい思い出をつくり、将来もこの地域で暮らしたいと思ってくれるようにしたい」などと、今後の願いを力強く話している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。