自己表現の「書く力」磨く 赤山さんが教室
言葉に親しみ、書くことや表現方法を磨く教室「ことばと居場所カタ・コト」が、和歌山県和歌山市小雑賀に開設されて間もなく1年。主に小学生を対象に、表現することの基本となる「書く力」を育む場所で、主宰する赤山仁美さん(34)は「自分らしさを大切に、自己表現することで『好き』の力を取り戻してほしい」と、日々子どもたちと向き合っている。
小学生の子どもたちが集まったこの日の教室で、みんなが小瓶から次々と取り出したのは、言葉が記されたカード。「いきる」「ととのえる」「ひらめく」「まちまち」「うちょうてん」…。
分からない言葉は辞書で調べ、それらを使って短文づくりに挑戦。その他、文字のない絵本を使い、想像を膨らませてストーリーを作ったり、絵柄付きのサイコロを振って、出た目から自由に物語を考えたり。遊び感覚で語彙(ごい)力や表現力を自然に身に付けていく。完成した文章を発表し合い、みんなで共有。それぞれの自由な発想を大切にし、この教室には「間違った答え」はない。
赤山さんは海南市出身。新潟大学人文学部を卒業後、塾の講師などを経て、小学校の学童保育で子どもたちと関わってきた。その中で重要だと感じたのは、「自分は大切な存在」と思える、子どもたちの自己肯定感を育むこと。それを高めるためにも、自己表現を大切にする必要性を感じたという。
思いを言葉にしたり、物を作ったりするのが好きだった赤山さんは「生きていくということは全てが自己表現。好きなことをして自分を表現することでエネルギーも高まり、前向きに取り組める。そんな力を引き出すサポートがしたい」と、昨年4月に教室を開設した。
「作文が嫌い」「書くのが苦手」という子や、周囲とのコミュニケーションをとるのが苦手な子も多い。教室名「ことばと居場所 カタ・コト」は「片言でもいい、下手でもいいから伝えたいことを表現してみよう」との思いから。作文というと身構えがちだが、多少の漢字の間違いや句読点などは気にせず、例えば、作文が苦手な子には「まずは自分の好きなことについて書いてみよう」とアプローチ。「ここで書くことは、誰にも見せない日記のようなもの」と赤山さんは言う。
型にはまった指導では、子どもたちが自信をなくすことも。教室で文章を書く際は形式にとらわれず、原稿用紙、真っ白な紙のどちらを使っても構わない。4人までの少人数制。意見や答えを周囲に合わせることが優先されないよう配慮し「作文に関しても、極力〝こうだ〟と直さないようにしています。人と違ってもいい。みんながありのまま、自分らしくいられる場所にしたい」と話す。
ほとんど作文を書けなかった子でも、抵抗なく表現できるように。これまで数カ所で企画した読書感想文の講座も好評。その評判が口コミで広がり、今では20人ほどの子どもたちが通っている。教室に通う男児の母親は「子どもの語彙を引き出してくれる。『こんな言葉を持ってたんだ』と驚かされることも多いですね」と変化を喜ぶ。
赤山さんは大学時代に劇団を立ち上げた経験もあり、今後は子どもたちのダンスパーティーを開くという斬新な企画も計画中。
21日には同市紀三井寺の南コミュニティセンターで、小学生とその保護者を対象にした俳句づくりのイベントを開催。午後1時から、3時からの2回。各回定員40人(20組)。参加費は子ども1人につき500円。
問い合わせは赤山さん(℡090・7888・4737)。