きのくに音楽祭への思い 出演の中谷政文さん

きのくに音楽祭への思いを語る中谷さん

和歌山県民にもっと音楽の楽しみを――。10月4~6日に初開催される「きのくに音楽祭」は、7月1日にチケットの一般発売を控え、和歌山ゆかりの音楽家や愛好家たちによる企画の準備が進んでいる。メイン出演者の一人で、「会場でライブ演奏の素晴らしさを感じてほしい」と話す和歌山市出身のピアニスト・中谷政文さん(35)に、音楽祭への思いや音楽家としての歩みを聞いた。

中谷さんは同市木ノ本の生まれ。全日本ピアノ指導者協会和歌山支部の小畠時栄さんの指導を受けるようになった小学生時代から、本格的に音楽の道を志すようになった。

4年生の時、市民会館でオーケストラと協演するコンサート企画があり、ブラームスのハンガリー舞曲第5番を演奏。指揮者と空気感でコミュニケーションをとり、音楽をつくり上げていく楽しさを知ったことは大きな体験となった。

東京藝術大学付属音楽高校に進み、同大ピアノ専攻を卒業。2008年から渡米し、マイアミ大学で博士号を取得。第8回ソフィア国際ピアノコンクール第1位(08年)をはじめ数々のコンクールで入賞し、18年度和歌山市文化奨励賞を受賞するなど、今後の活躍がますます期待されている。

音楽は主に旋律、リズム、和声の3要素で成り立ち、中谷さんは中でも和声の美しさに心を奪われてきた。移り変わる和声からは、人間が体験し得るあらゆる感情が混在していることを感じることができるという。そうしたものに、いかに繊細に反応できるかが演奏者にとって重要と考えている。

「反応は演奏会の本番になればなるほど研ぎ澄まされていき、音楽と自分が同化していきます。本番の瞬間にその作品について気付くことがたくさんあり、それは聴衆と一緒でないとできないことです」と、ライブ演奏の大切さを話す。

それだけに、生まれ育った和歌山で、多くの人が生の音楽を楽しめる音楽祭が開かれることはうれしい。「ライブ演奏は一回限りで、何が起こるか分かりません。会場や聴衆、いろいろな要素が相まって生み出され、皆さんと一体となってつくり上げるものです」と、会場での体験を呼び掛ける。

中谷さんは10月4日午後7時から、メイン会場のメディア・アート・ホール(同市西高松)での「今夜はクラシック」に出演。シューベルト「アヴェマリア」、リスト「ラ・カンパネラ」、同市出身のバイオリニスト・寺下真理子さん、チェロ奏者の林裕さんとの協演でメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲」などを演奏する。

プロの演奏家として「やらなければならないこと」は多くあるが、この曲はいい、演奏したいといった「趣味」としての楽しむ側面を手放したくないという中谷さん。「演奏者が楽しまないと、音楽の楽しみは聴く人に伝わりません。ぜひライブで聴いて楽しんでください」と話している。

音楽祭に先立ち、中谷さんは7月15日午後3時から、和歌山市民会館大ホールで開かれる県第九合唱団「夏の大合唱」の第1部に出演し、藤岡幸夫さん指揮、関西フィルハーモニー管弦楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏する。第2部は、県第九合唱団と同管弦楽団による岩河三郎「富山に伝わる三つの民謡」などの合唱曲となっている。

チケットなどは和歌山音楽愛好会フォルテ(℡073・422・4225)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。