新作先行上映で舞台あいさつ 山田洋次監督

満員の観客を前にあいさつする山田監督㊧と土山さん

山田洋次監督(89)の新作映画『キネマの神様』の先行上映会が5日、和歌山市松江のジストシネマ和歌山で行われ、山田監督と同作の照明を担当した土山正人さん(同市出身)が舞台あいさつを行った。山田監督は「和歌山は熱心に試写会を盛り上げてくれる。作った僕にとってこんなにうれしいことはない」と喜びを語った。

山田監督の代表作『男はつらいよ』シリーズに登場する、人情あふれるまちづくりを目指す「わかやま寅さん会」(西本三平代表)が主催した上映会。山田監督と土山さんは、2019年に同館で行われた『男はつらいよ50 お帰り 寅さん』の先行上映以来、2年ぶりの和歌山訪問となった。

『キネマの神様』は人気作家・原田マハさんの同名小説を映画化。かつて撮影所で働き、何よりも映画を愛していた男を主人公に、山田監督が歩んできた日本映画界の思い出が反映されている。

1回目の上映後にあいさつした山田監督は「最近の映画館の座席は50%。この1年半、映画関係者はつらい日々だった。こんな大きい会場でいっぱいの人がいて感動しています」と喜んだ。土山さんは「きょうを迎えられるか不安だったが、こうして皆さんとお会いできたことが本当にうれしい。映画を銀幕で見ていただけたというのが感謝です」と話した。

同作は昨年3月1日にクランクインしたが、3月末、主演を務めるはずだった志村けんさんが新型コロナウイルス感染症で逝去。その後、7都府県に緊急事態宣言が発令され、撮影は長期の中断を余儀なくされた。

志村さんから主演のバトンを引き継いだのは沢田研二さん。起用について山田監督は「天下の三枚目から天下の二枚目に役を代えたのは相当大胆なことをやっちゃったかなと思った」と語った。

脚本の変更はほぼ行わず、「同じ脚本でも演じる人で全然違う。かなり対照的な2人だったから同じ楽譜(脚本)で演奏してほしかった」と述べ、「沢田君が演じた主人公がどんなに魅力的か、映画を見た皆さんは分かったと思う」と振り返った。

来場者との質疑では、山田監督は視覚障害のある人に、これまでに映画を見る上で困ったことはないかと質問。「せりふのないシーンは状況が分からない時がある」と聞き、山田監督が「映画のラストシーンはせりふがないことが多い。この作品の一番ポイントであるラストの状況は分かりましたか」と尋ねると、「はい。よく分かりました」との答え。山田監督は「よかったなぁ。ほんとによかったなぁ」と笑顔だった。

山田監督は「映画館でスクリーンを通して、大勢が一緒に見て笑って泣くのが映画だと思う。面白い、いい映画を見たいという皆さんの気持ちが、僕たちの映画を作っていくという意欲をかき立てている。映画館で映画を見るという習慣をなくさないでほしい」と呼び掛けた。

この日、用意されていたチケット800枚はほぼ完売。先行上映会は山田監督の出身地やゆかりのある4市で開催し、和歌山を皮切りに、大阪府豊中市、山口県宇部市、宮崎県日向市で行う。

2回目の上映をロビーで待っていた北村謙さん(40)は「山田監督の作品は心に響くものがたくさんある。和歌山に来てくれるだけでもすごいこと。新作が楽しみ」とワクワクした様子だった。

『キネマの神様』は8月6日に全国公開される。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。