
田辺市下三栖にある曹洞宗の「五郎地蔵寺」の境内にある『五郎庵』。美味しい精進料理が人気です。素材ひとつひとつを丁寧に丁寧に扱い、見た目も美しい品々に感激! 自然と一品一品をじっくり味わっていただきたくなります。お寺の境内という特別な場所で、「食べること」に向き合う時間をゆっくりと過ごしてみるのはいかがでしょうか。
今日のランチはお寺で


和歌山市方面からは、田辺市上万呂の交差点を左折、熊野橋を渡り県道216号を進みます。駐車場は、本堂の正面階段下が便利。「いちか」の看板の手前を入ると広い駐車場があります。本堂前の階段を上ると、五郎地蔵寺の正面に出ます。


本堂の右手に五郎庵の看板娘ならぬ「看板たぬき」が出迎えしてくれていますので、暖簾をくぐって中へ。

庫裏を改装した店内。

丸窓とペンダントが素敵です。

各テーブルには、さりげなくお花が飾られています。店内の至る所に本が置いてあって好きに読むことが可能。おひとりさまでも気兼ねなく。
「食事を作るのもいただくのも大切な修行」

五郎地蔵寺の住職でもあり、五郎庵主宰の市橋宗明(しゅうみょう)さんは、静岡県にある曹洞宗のお寺「可睡斎(かすいさい)」で修行。可睡斎は、1日に100人も200人も宿坊される大きなお寺で、宗明さんは典座寮(てんぞりょう)と呼ばれる調理場を担当していました。
「食事を作るのもいただくのも大切な修行」という曹洞宗の教えがあります。「可睡斎」で1日に100以上もの精進料理のお膳を任されていた宗明さん。
「五郎地蔵寺」は檀家を持たない信者寺。宗明さんは「五郎地蔵寺」に帰った際、お寺の庫裏(くり)と呼ばれる僧侶の居住する場所を改装し、カフェ営業を始めることにしました。

スイーツと喫茶担当の華子さんは以前、喫茶店を経営していたこともあります。
「敷居の低いお寺を目指しています」と宗明さん。精進料理だけではなく、喫茶をやっているのも、土足で入れるように改装したのも、皆さんに気軽にお寺に来てもらいたいからだと言います。
「食べることは、生きること」

昔、お寺で使われていた弁当箱に入れられた、先付けと五観の偈(げ)。
精進ランチを注文すると、まず、運ばれてくるのが、先付けと五観の偈と言われる食事の前に唱える禅宗の偈文(げもん)です。

五観の偈を唱え、静かに食事に向き合います。

この日の先付けは、丹波の黒豆と汲み上げ湯葉。
艶々の黒豆と食感の違いを楽しめる汲み上げ湯葉の余韻を楽しんでいると、溜息が出るほど美しい本膳が運ばれて来ました。

見惚れてしまうほどの美しさです。

月替わりのメインのお皿は「里芋の焼きコロッケ」。
里芋の独特の粘りのある生地で作られた何ともやさしい味の焼きコロッケ。自家製のごぼう味噌と共にいただきます。プチトマトと共に添えられているのは、ロメインレタスの柚子胡麻和え。
ロメインレタスを胡麻和えにするという発想にも驚かされるが、柚子とも相性がよく爽やかな香りとよく合います。細部にまで手を抜いていないこだわりが感じられる一皿でした。

この胡麻豆腐を作るのにどれだけの手間がかかっているのだろうかと思いながらいただきました。

フライパンで炒った大豆と米を昆布茶で炊いたこの日のご飯は「炒り大豆ご飯」。炒った大豆の香ばしさとほんのり香る昆布茶とご飯の炊き具合まで完璧で、たまたま居合わせた常連のお客様が今までで一番好みのごはん!と大絶賛していました。

厚揚げのしぐれ煮、にんじん、スナップエンドウ、どんこ椎茸、菊芋チップスの椀。
どんこ椎茸とは、かさが開ききらないうちに収穫した椎茸のことで、肉厚で良い出汁が出るのだそう。どれも素材を最大限に生かした味付けで、今まで食べたどの椎茸よりも美味しく感動しました!

味噌漬け豆腐、酢れんこん、芽キャベツの天ぷら。
精進料理には、動物性のものは出汁にも使いません。鰹節も使えないので、昆布と椎茸で出汁を取ります。昆布は、三大高級昆布のひとつでもある羅臼昆布を使っています。味が強く、とろみがつかないので良い出汁が取れるのだそう。
夫婦の共同作業のスイーツ

精進料理とあんこ作りは、宗明さんの担当。スイーツと喫茶は、奥様の華子さんの担当です。
今回いただいた「小豆抹茶のマーブルチーズケーキ」は、クリーミーな抹茶のチーズケーキに小豆ときび糖だけで作った自家製あんこが挟まれています。絶妙なバランスのケーキは、まさに夫婦が協力して作られた逸品。

柚子とカシューナッツのガトーショコラ。

今の季節だけの「よもぎ餅ぜんざいセット(ドリンク付き)」は950円。

人気のおはぎも間違いない美味しさ。

隠れた人気メニューの「気まぐれミックスジュース」。

ストーブの上で焼き芋も焼いています。なんと1個100円〜(大きさによって価格が変わります)。

新聞紙で作った袋に入れてくれます。


どの料理をいただいても、この一皿が完成するまで、どれだけの手間と時間をかけられたのだろうかと、食事を通し感謝の想いが自然と湧いてきました。
やさしく、味わい深い料理をじっくり楽しみに、そして気軽に、『五郎庵』に足を運んでみてください。

ごちそうさまでした。
名称 | 五郎庵 |
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所在地 | 和歌山県田辺市下三栖514(五郎地蔵寺内) ![]() |
電話番号 | 0739-34-2896 |
営業時間 | 11:00~18:00(ランチは14:00まで) |
定休日 | 木・金曜 ※お寺の都合で臨時休業あり |
駐車場 | あり |
@goroan421 |
和歌山の真ん中に住む、身体に良いことが大好きな生粋の和歌山県人。古いモノや古いモノに新しい風を吹き込んだお店が得意分野。ニッチな目線でこだわりの場所や人を紹介します。年間100泉が目標の温泉偏愛者。好きな言葉は、「源泉かけ流し」湯治文化を再生させるのが夢。