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JR初島駅

【有田市】「JR初島駅」世界初の3Dプリンター駅舎を建設!

公開日 2025.03.27

高校野球で名の知れた箕島高校がある和歌山県有田市のJR初島駅。世界で初めて3Dプリンターを使って駅舎の建設工事が行われました。その様子をレポートします。

老朽化が進み、
建て替えが検討されたJR初島駅

JR初島駅

1948年に建設されたJR初島駅の駅舎。JR和歌山駅からJRきのくに線に乗車すると、高校野球で有名な箕島高校があるJR箕島駅の一つ手前の駅で、パンダがラッピングされた特急くろしおは通過。現在は無人駅です。

老朽化した木造等の駅舎の建て替えが検討される中で、3Dプリンターの技術を活用して新しい駅舎の建設工事が行われることになりました。2025年3月25日23:57、御坊方面行の最終電車が発車したあと、深夜0:00ごろから工事がスタート。翌朝5:45の和歌山方面への始発電車が発車するまでの間に、建物の建設は完了するというのにはびっくりです。

現駅舎のすぐ隣に足場が組まれ、クレーン車がスタンバイ。現場で待機していた作業員はわずか6人でした。あとはトラックを誘導したり、現場見学に来た人たちの安全を確保するする警備員と…。

建設用3Dプリンター技術とは

初島駅の駅舎の建て替えは、JR西日本(大阪市北区)、同グループのベンチャーキャピタル「JR西日本イノベーションズ」(大阪市北区)、建設用3Dプリンターで住宅建設を手掛ける「セレンディクス」(兵庫県西宮市)によって、プロジェクトが進められました。

「セレンディス」によると10平方メートルの住宅だと24時間以内330万円で、50平方メートルの住宅だと48時間以内550万円で完成するそうで、その脅威の建設スピードとコストパフォーマンスは、世界中から注目を浴びています。

トラックが到着。クレーンを使っての組み立てが始まります。熊本県の工場から、4台のトラックで運送されてきたパーツは屋根や3壁面のわずか4つ。これらのパーツは3Dプリンターで出力されたもので、モルタルで型枠を作り、内部に鉄筋とコンクリートが組み込まれていて、耐震性も備わっています。聞くところによると3Dプリンターで各パーツの制作は7日間程度でできるそうです。

続いて反対側の壁が到着し、再びクレーンで組み立てられていきます。すっぽりと向かい合わせに設置されました。

さらに駅の顔となる正面の壁がはめ込まれます。クレーンで吊り上げるクレーンベルトとというのでしょうか、スリングというのでしょうか…、吊り具が慎重に使われ、作業員たちは引っ掛ける位置やねじれの有無にも細心の注意を払っていました。4つに分けられたそれぞれのパーツがそれだけ重量があるということなのでしょうね。

こちらが、駅の正面玄関です。段々と新駅舎の形が見えてきました。現駅舎に比べてすごく近代的でコンパクトです。壁面には有田市の名産「みかん」や「たちうお」をイメージした装飾が施されています。

最後に到着したのは屋根。これを覆い被せれば完成です!

はい。屋根が被せられました。まるで立体パズルをはめるような、プラモデルを組み立てているようなイメージ。ここまでにかかった時間はおよそ2時間。その後、足場が解体され、クレーン車も撤去され、約6時間後の始発電車が発車する前に工事は完了しました。

新駅舎の供用開始時期と
JR初島駅が選ばれた理由

新駅舎は鉄筋コンクリート造の平屋、高さ2.6m、幅6.3m、奥行2.1mの約10平方メートルです。

住宅では実績がある「セレンティクス」も駅舎建設を手掛けるのは今回が初めてで、JR西日本によると、3Dプリンターを使用した駅舎の建設は世界で初めての試みと言います。建設および維持管理にかかるコスト効果、耐久性・耐食性などを検証して、他駅への展開可能性を検討していくそうです。

3月26日現在の駅舎はこんな感じになっています。新駅舎(右)が小さく見えますよね。今後、内装や電気工事が行われ、安全性が確認されたあと、7月ごろから供用が開始される予定です。

最後に、全国ニュースになるほど大注目を浴びる建て替えが、なぜ和歌山県有田市の初島駅なのか?と尋ねると、JR西日本の広報担当者は、建設から76年が経ち、そもそも駅舎が老朽化していたこと、さらに海が近く、塩害の検証ができることなどを理由に挙げていました。

工事当日は深夜にもかかわらず、多くの近隣住民が建設現場を見学していました。

供給が開始されたらぜひ、JRきのくに線の普通車に乗って初島駅を訪れてください!