紀美野でシェアハウス運営 片桐翔太さん
大阪から和歌山県紀美野町に移住した片桐翔太さん(31)が、移住を考える人と地域住民の交流拠点となるようにと始めた同町田のシェアハウス「シェアードレジデンスフラッグ」が、オープンから1年4カ月を迎えた。片桐さんは「地域のコミュニティーを再構築したい。この先も心豊かな暮らしができるよう地域の価値を高め、この地を訪れる人を増やしたい」と話している。
【写真】片桐翔太さん㊨と妻の祐保さん
片桐さんは泉佐野市出身。大阪工業技術専門学校を卒業後、建築現場で働いた。23歳の時に「世界の建築物を見たい」と、海外へ旅に出た。
2016年の熊本地震での災害ボランティアとして活動中、祐保さん(28)と出会い、その後結婚。共に世界を回った。帰国後は、定住するなら自然と共生する暮らしがいいと、20年に紀美野町に移り住んだ。
同町での生活が始まり、子どもも生まれた。しかし、過疎と高齢化が進む地域で、核家族で暮らすことは想像以上に大変だったといい、周囲で移住を検討する人も仕事や住める空き家が少ないなどの理由から、諦めてしまう人もいたという。
何かサポートできることはなかったのかと考え、片桐さんは「ここで暮らし続けるためには移住者と地域住民のコミュニティーが必要」と、地域にある共助の関係を一軒の家で実現すべく、シェアハウスを始めた。
名称の「シェアードレジデンスフラッグ」には、地域の旗振り役として、また、移住を考える人らのピンを立てるという意味を込めた。
シェアハウスは、長期で田舎暮らしが体験できる他、一軒の家の中に地域が存在するかのように、複数世帯が暮らし、相談など深い交流ができるのが魅力。現在は20代の2組の移住者が住む。キッチンやバス、トイレは共同で部屋は個室。ワークスペースなどもある。夕飯は共にし、当番を決め助け合い生活している。
地域の人との交流イベントやワークショップなども開催。同所で1年以上暮らす20代の女性は「移住する前のワンクッションとして、試験的に生活できるのは大きい。生きる力がついた」と話す。
片桐さんは、さらに「100年続く里山」を目指し、遠方からも気軽に訪れて交流できるよう施設の拡大を予定。クラウドファンディングにも挑戦した。245人から542万円の支援を受け、宿泊棟の完成や屋外キッチンの建設も進めている。露天風呂やテントサウナなどの屋外温浴スペースなども建設するという。