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有害鳥獣の毛で筆作り 県猟友会女性部が活動

公開日 2024.07.17

女性狩猟者96人が所属する和歌山県猟友会女性部は、食べる以外にジビエを利用する方法を考えようと、捕獲したアライグマやイノシシなど有害鳥獣の毛を使った筆を制作する「KEMONOfude(けものふで)」プロジェクトに取り組んでいる。

【写真】手作りの筆を持ち笑顔の溝部さん㊧と加茂さん

同会は2018年に発足。子どもたちに狩猟に関心を持ってもらおうと、野生や自然に親しむイベントや、県内の小中学校で「有害鳥獣と自然・農業」をテーマにした出前授業を行っている。

部長を務める狩猟歴10年の溝部名緒子さんは、イノシシの肉を食べたところ全身がぽかぽかして体調が良くなったことをきっかけに免許を取得。新人育成指導を行う他、SNSやFM和歌山で山やジビエの話を発信するなど狩猟の魅力を伝えている。

溝部さんの本職はエステサロンを経営するエステティシャン。メイクにも詳しいことから、アライグマを捕獲した時、アナグマの毛を使った最高級のメイクブラシに似ていることを知り、「日本で売られている化粧筆の毛は99%が輸入のもの。駆除した動物の毛で国産の筆を作ることができるのではないか」と思い付いた。

化粧筆を制作する会社に相談を持ちかけ、メンバーの加茂千明さんと2人、大阪で作り方を学んだ。「毛を1本ずつ選び整える緻密な職人技に驚いた」という。

和歌山市では捕獲したアライグマを、苦痛を与えない適切な方法で安楽死処分している。溝部さんと加茂さんは動物病院で筆に適した毛を選別してもらい筆を作り始めた。1~2歳の毛はふわふわで毛質が良いことが分かった。また、イノシシのたてがみはペンキのハケに適していること、シカの毛は筆に使えることにも気付き、さまざまな筆を制作。子どもたちに毛に触れ、その筆を使って絵を描く体験を出前授業に盛り込んでいる。

溝部さんは「生きている動物に直接触れることはできないが、毛の手触り、においなど本物に触れてもらいたい」と話し、カワウの羽を使ったボールペンや、羽子板の羽作りにも挑戦。今後はイノシシの体毛を使って何かを作ってみたいという。

授業では、有害鳥獣について写真や紙芝居で分かりやすく伝えている。農家の被害から手がかりを見つけ、犯人を推理していくクイズや、動物の気持ちになって、なぜ農作物を食べたのかを考えるなど、楽しく学んでもらうよう工夫を凝らし「子どもたちの五感を揺さぶる授業で、自然の大切さを伝えたい」と話している。

問い合わせはメールで同会女性部(ladycrea1202@gmail.com)。