脳脊髄液減少症 治療推進へ県に要望書
脳脊髄液減少症の治療法「ブラッドパッチ(BP)療法」が4月1日から保険適用となったのを受け、推進運動の中心となっている脳脊髄液減少症患者支援の会(大平千秋代表、中井宏県代表)などは8日、県庁の仁坂吉伸知事を訪れ、同疾患や治療法の周知推進などを求める要望書を提出した。全国初の要望書提出で、今後は全国の自治体に提出される予定。同疾患の治療推進は、中井県代表を中心に14年もの歳月をかけて運動を続け、国が保険適用を認めた。
同療法は、交通事故やスポーツによる外傷、体への強い衝撃などにより脳脊髄液が漏れ続け、頭痛、めまい、吐き気、思考力低下などの症状が現れる脳脊髄液減少症の治療に用いられる。脳脊髄液が漏れ出している部分の硬膜外に患者自身の血液を注入し、組織の癒着や器質化により漏れ出ている部分を閉鎖し、漏れを止める。
潜在的な患者数は30万人いるとされるが、医師の間でも現在もなお認知度が低いため、同疾患だと見抜けず、治療されないケースが多いという。
要望書提出には、自身も患者であり、認定NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の代表理事も務める中井県代表と女性患者2人を含む7人が出席。
女性らは、交通事故の後遺症で吐き気や目まいが続いたが、診察を受けても原因が分からず「精神疾患だ」と見捨てられるような体験を何度もしたという。医師だけでなく、家族にも理解されず、苦しい生活が続いてきたことを涙を浮かべながら語った。その後、インターネットで患者支援の会があることを知り、ブラッドパッチ療法を受けたことで、症状が改善したという。
要望書では、専門医による医師を対象にした研修会・意見交換会を県主催で行うことや、同NPOが製作した同症のデータベースの内容を習得するよう県内の医療機関に働き掛けること、同症の啓発活動を市町村と連携して行うことなどを求めている。
仁坂知事は「要望書の項目は全部やりましょう」と全面的に受け入れ、周知面でも支援することを約束した。中井県代表は「要望書提出は活動の第一歩。今後、全国で苦しんでいる患者に疾患を知ってもらい、救いたい」と力を込めた。
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脳脊髄液 脳室内で生産され、脳と脊髄の周りを循環することによって、脳や脊髄を守る働きをすると同時に、神経の活動によって産生される老廃物を取り除く役割を果たしている。脳脊髄液が漏れ出し減少すると、頭痛や頸部痛、めまい、耳鳴りなどのさまざまな症状を引き起こす。
記事元:わかやま新報
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