太平洋戦争中の和歌山大空襲から71年の節目を迎えた9日、和歌山市西汀丁の汀公園では本年度の戦災死者追悼法要が営まれ、遺族ら約150人が参列して不戦への誓いを新たにした。また市民会館では「第23回平和を希(ねが)う念仏者の集い」が開かれ、立命館大学名誉教授の安斎育郎さんの記念講演などを通して平和を考えた。
追悼法要は毎年、市戦災遺族会(吉田フミ子理事長)が主催。同市は米軍による十数回の空襲を受け、約1400人が犠牲になった。特に昭和20年7月9日から10日未明にかけての大空襲では市中心部が焼け野原になり、避難者が集まっていた汀公園では半数以上の748人が亡くなった。
法要で吉田理事長は「長い年月が過ぎ去ったいまも、地獄のような光景が私の記憶から消えることはない。今日の平和が尊い犠牲の上にあることを忘れてはいけない」と慰霊の言葉を述べた。
八幡台小、野崎西小、伏虎中、和歌山大学付属中の4校の児童生徒が、平和への祈りを込めた手作りの千羽鶴を奉納。参列者は一人ひとり焼香し、鎮魂の祈りをささげた。
和大付属小の児童4人が「いまのような平和な日本を築いていくことが僕たちの使命。和歌山から平和な国づくりをしていきたい」などと「平和への願い」を読み上げた。
念仏者の集いは浄土真宗本願寺派「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)和歌山教区委員会が主催。ことしは『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』などの著書がある安斎さんが「現代日本にとっての非戦・平和を考える―過去に現在を見、現在に過去を見る―」と題して記念講演した。
安斎さんは「国境なき手品師団」の名誉会員でもあるといい、赤いカードが白になるマジックを披露。実は最初に見せた一部分だけが赤だったという単純な種を明かし、「部分を見て、全体を知った気になってはいけない。人間は簡単にだまされ、戦争にも連れて行かれる」と注意を呼び掛けた。
また現代平和学では、平和とは「暴力のない状態」と定義されていることなどを紹介し、その実現に向けて「現実から目をそらさず、自分に何ができるかを考えて実践する、主体性を持つことが大事だ」と訴えた。