無縫製ニット編み機の製造などで世界的に知られる「和歌山の発明王」島正博さん(㈱島精機製作所社長)の妻で、平成25年5月6日に75歳で亡くなった島和代さんの生涯を描いたノンフィクション『紀州のエジソンの女房―島精機を支えた肝っ玉母さん・島和代物語』(梶山寿子著、中央公論新社)が出版され、反響を呼んでいる。
同書では、島精機を創業し、世界的企業に育てた正博さんを明るく力強く支えた妻としての内助の功に加え、4人の子どもを育てた母、姑との確執に苦悩しながらも尽くし続けた嫁としての姿などを多彩に活写。和島興産㈱(和歌山市本町、梅田千景社長)の前社長を務め、同市中心市街地の再開発などに貢献した経済人としての側面、気さくなおしゃべりで愛されたラジオ番組のパーソナリティーとしての側面など、和代さんの人生をさまざまな角度から紹介している。
著者のノンフィクション作家・梶山寿子さんは、昨年夏から和代さんを知る学生時代の友人や島精機の関係者などを取材。和代さんの多様な姿や多くのエピソードが集まり、「高度成長期を生き抜いた夫婦の物語」として伝記を構成することに決めた。
夫婦の深い絆がしのばれるエピソードを梶山さんに多く語った三女の山田都さんは、和代さんについて「明るく派手なイメージが強いと思いますが、実際は繊細な神経の持ち主で、泣き上戸、耐える女性でもありました。母の姿がそのまま描かれているこの本をぜひ読んでいただきたいです」と話している。
梶山さんは「混迷しながらも夢があふれていた昭和を生きた女の一生の物語に、共感していただける女性は多いと思います。和代さんの心を伝えたいと願い、和歌山の魅力も盛り込みました」と話している。
同書は1500円(税別)、県内外の主要書店などで取り扱っている。