リアルかかしに「ドキッ」 山口地区で話題
せっせと農作業をする後ろ姿に、それを見守る小さな子どもたち。「奥さん、ようさんお芋とれたして」――。思わずそんな声を掛けたくなりそうだが、実はこれ、人間そっくりのかかし。この秋、和歌山県和歌山市の山口地区で「本物そっくり」と話題になった。
制作者は、上黒谷にある祗園寺の松尾孝龍住職(61)。地区ではイノシシによる農作物被害に悩まされていることから、リアルなかかしの制作を思い付いた。
もともとは女性1体だけだったが、「これでは寂しいだろう」と、1人、2人と家族が増え、気付けば孫も加わっていたそう。それぞれ特に名前は付けていないが、家族はおじいちゃんとおばあちゃん、孫2人の構成。
苦労したのは人間らしく見せるための肉付き。おばあちゃんの背中の曲がり具合もリアルに見えるよう工夫した。
松尾さんは「『おばあちゃん、何してるんよ』って声を掛けて、びっくりする人もいましたね。作っていると愛着が湧き、畑に置いてすぐ、雨が降ったときには傘を差しに行こうかと思ったぐらいです」と笑う。
10月には地域の子どもたちの芋掘り体験もあり、芋が大きく成長するまで畑に設置。当日も一緒に収穫の喜びを共有した。
同地区ではちょうど、山口まちづくり協議会(平岡卓治会長)が、かかしコンテストを実施。出品へ声が掛かり、もともと顔部分は簡易で目や口などはなかったが、再度手を加えて出品し、見事、優秀賞5点のうちに選ばれた。
先日、小倉小学校で行われた祭りにも〝家族〟で参加。ステージ発表を観賞し、コンテストの表彰式にも出席。式後には副賞の米を抱えていた。
松尾さんは「楽しいことを考えると自然と輪ができ、地域の人と一層仲良くなれるのを実感しました。新しいかかしを作りたい思いもありますが、皆さんの期待も大きいだけに、プレッシャーも感じますね」と笑顔で話していた。
記事元:わかやま新報
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