黄金桃に再起を誓う 台風で苦境の果樹農家

荒れ果てた畑の光景に肩を落とす土橋さん(紀の川市内で)

和歌山県内に甚大な被害をもたらした9月の台風21号の襲来から3カ月。風速50㍍超の猛烈な風は各地に大きな爪痕を残し、農家は苦境に立たされている。紀の川市下丹生谷の果樹農家「たつみフルーツ」の土橋弘幸さん(33)もその一人。ぼうぜんとした日々を過ごしていた土橋さんだが、「全国に和歌山産の果物を届けたい。この仕事を続けていく」と再起を誓っている。

樹齢30年の老木は根元がぱっくりと割れ、木全体が大きく傾いていた。台風に備え補強のため設置していた支柱も折れ曲がって倒れ、根こそぎになった木が横たわる。畑の変わり果てた光景を前に「折れた木はもう実をつけない。全部切るしかない」と土橋さんがつぶやいた。

たつみフルーツでは桃や柿などを栽培している。土橋さんは、父の龍雄さん(66)が約30年前から栽培に取り組む黄金桃「ゴールデンピーチ」の魅力にひかれ、会社員生活を経て2年前、専業農家になった。

ゴールデンピーチは川中島白桃の突然変異で生まれた晩生の品種。マンゴーのようなトロトロした果肉と香りが特徴で、食べ頃には黄金色になる。県での認知度は高くないが、「父の栽培技術を受け継ぎたい」と土橋さんは4年前、空いた土地に苗木を移植。ことしから初めて出荷しようとしていた矢先だった。

台風が去った後、畑を見に行った。夢を懸けていた木は枝が折れ、無残な姿になっていた。これから新しい木を植えても、実をつけるまでに少なくとも3年はかかる。「どう立て直せばいいのか」。この状況では数量が確保できず来夏の出荷は厳しい。ふさぎこんだ。

近隣の農家も同じように打撃を受けた。「あら川の桃」で全国に知られる桃の一大産地だが、栽培農家の多くで高齢化が進む。台風被害をきっかけに離農を考える人も出てきた。土橋さんは「『紀の里ブランド』は今後どうなるのか」と危惧する。

師走に入り、休眠期の桃は剪定時期を迎えた。畑にはまだ折れた枝や支柱が散乱している。それらを取り除き、新しい苗木を移植する。気の遠くなるような作業だ。だが「被害を教訓に、今後は折れないような仕組みを考えていかないと」とようやく前を向けるようになった。

台風が接近する直前、立っていられなくなるまで収穫作業をしていたという。木は折れたが、命は助かった。生き残った新木はしなやかに枝を伸ばしている。「心は折れていない。ゴールデンピーチで勝負する」と土橋さんは表情を引き締めた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。