奇術界の先駆者・天耕を舞台化 PJ始まる

奇術界に名を残した金沢天耕

和歌山県和歌山市に生まれ、明治から昭和初期にかけて和歌山の奇術発展に尽くしたマジシャン・金沢天耕(てんこう)の半生を描いた物語が舞台化されることになり、大阪と和歌山を演劇の道でつなぐ「演劇街道きのくにプロジェクト」が始動した。9月の市民会館での公演に向け両府県で出演者の募集・リハーサルを行い、半年間の交流を重ねて舞台に臨む。プロジェクトのメンバーは「活気に満ち、全国に名をはせた文化都市、和歌山の姿を発信したい」と意気込んでいる。

同作は「和歌山アマチュアマジシャンズクラブ」(現和歌山マジシャンズクラブ=森教二会長)の創設者、金沢天耕の自叙伝『酔筆奇術偏狂記(すいひつきじゅつべんきょうき)』を、孫で岩出市出身の劇作家・金沢寿美さんが脚本化。

紀州藩の城下町として栄えた明治・大正・昭和初期の和歌山と、西洋マジックの黎明期を描いた作品。2014年に、金沢さんが所属する劇団が大阪で初演した。

金沢さんには当初から「和歌山でも舞台化し、地元の人に見てもらいたい」との思いがあり、自身の劇団のオーディションで、りら創造芸術高校卒業生の坂口勝紀さん(紀の川市出身)と出会ったことをきっかけに、和歌山マジシャンズクラブにも相談。昨年の春ごろから舞台化に向けて本格的に動き出した。

天耕は1931年、当時としてはまだ珍しかったアマチュアマジッククラブを、ぶらくり丁で結成。全国で2番目の設立だったという。手先の技術で魅せる「スライハンド」マジックを得意とし、四つの玉を操る「四つ玉」や、たばこを何本にも増やす「シガレット」などの技を独自に考案し、ブラジル公演にも参加。日本奇術界への貢献が認められ、81年には奇術賞「緒方賞」を受けるなど、奇術界の歴史に名を残し、95年に86歳で亡くなった。

作品づくりを通じて「ふるさとの活気に満ちた姿を、意外な思いで知ることができた」と金沢さん。ただ上演するという一過性のものでなく、演劇に関わるメンバーで共に舞台をつくろうと呼び掛け、プロジェクトには和歌山の演劇人や、海南や紀美野町で地域活動をするメンバーらが加わった。

演出には、海外での舞台も数多く手掛ける佐藤香聲(かしょう)さんを迎える。坂口さんが天耕役を演じ、せりふに和歌山弁を盛り込み、和歌山マジシャンズクラブの会員も出演し、華麗なマジックを披露する予定という。

6日には市民会館で、プロジェクトのメンバーらが発足の記者会見を開き、生前の天耕に指導を受けた同クラブの指導者で前会長・岩橋延直さんは「天耕先生はアメリカまで遠征に行ったほど。先生にマジックを習おうと、全国から大勢が和歌山に来た。情熱のある偉大な人だった」と振り返った。

大阪での舞台も鑑賞したといい「空襲のことなど和歌山のことが細かく描かれていて感動した。作品を通じて、この和歌山に演劇が根付けばうれしい」と期待。金沢さんは「私自身も小学校の時に見た演劇に感化され、今も演劇をつくり続けている。初心者から熟練の方まで、私たちの趣旨に賛同してくださる方、どなたでも参加いただきたい」と話している。

オーディションは4月中旬以降、和歌山市と海南市で実施。おおむね16歳から36歳までが対象で、初心者歓迎。両府県で、合宿を含む14回のワークショップやリハーサルを重ねて舞台に臨む。

応募はジャパントータルエンターテインメントの公式ホームページから。問い合わせは金沢さん(℡090・6065・0470、メールembroideron@gmail.com)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。