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スピノサウルス化石発見 白亜紀の魚食恐竜

公開日 2019.03.17

魚食性の大型恐竜、スピノサウルス類の歯の化石が湯浅町の地層で見つかった。和歌山県立自然博物館(海南市船尾、高須英樹館長)が14日に発表し、西日本では初、国内では群馬県の2例に次ぐ3例目の発見。年代は中生代白亜紀前期(約1億3000万年前)で、アジアで見つかった同類の化石では最古級という。

スピノサウルス類は、獣脚類スピノサウルス科に属する恐竜の総称。恐竜では珍しく水中で泳ぐことが得意で、主に魚を食べていたと考えられている。大きい個体は体長15㍍に達し、背中に帆があるなどユニークな特徴から恐竜ファンに人気が高く、映画「ジュラシックパーク」シリーズに登場したことでも知られ、これまでにアフリカや東南アジアで化石が発見されている。

発見者は、東大阪市在住の会社員で、化石採集を趣味に著書も出版している宇都宮聡さん(49)。昨年10月21日、ミカンを買おうと湯浅町を訪れた際、立ち寄った海岸に転がっていた石を軽く蹴ったところ、石が割れた面に目が留まった。恐竜の特徴を熟知する宇都宮さんは、「スピノだ!」と大発見を直感し、興奮したという。化石は同館に寄贈され、東京都市大学の中島保寿准教授に観察と分析を依頼し、スピノサウルス類の歯と同定された。

見つかった歯の化石は先端部分の14㍉。不完全ながら円すい形で、表面に縦方向の何本もの条線が確認され、線と線の間にはしわ状の隆起が見られ歯のエナメル質が厚いなどの特徴が分かった。歯の大きさから、個体のサイズは3~5㍍ほどと推定され、大型恐竜のスピノサウルス類の中では小型とみられる。

発見された地層は、日本最大の断層である中央構造線の南側の西南日本外帯にあたり、群馬県の2例の化石も同外帯で見つかっている。中央構造線の北側、西南日本内帯にあたる福井県や兵庫県では多くの恐竜の化石が発見されているにもかかわらず、スピノサウルス類の化石の報告はない。白亜紀前期には内帯と外帯で生息していた恐竜が異なっていた可能性が考えられており、今回の発見はその仮説を裏付ける証拠の一つとしても重要とされる。

14日に同館で記者会見が開かれ、宇都宮さんは「小さな歯の化石だが、地球史的に大切な意味合いが含まれている」と話し、最古級の化石と推測されることから「スピノサウルス類の進化を考える上でも興味深い」と今後の研究に大きな期待を寄せた。

同館主査学芸員の小原正顕さんは、今回の発見が2007年に肉食恐竜の歯が見つかったのと同じ場所であることを紹介し、「大変うれしい。化石採集イベントで一般の人にも協力してもらい、さらなる発見を重ねて研究の情報量を増やしていきたい」と話していた。

歯の化石は修復すれば全長3㌢弱ほどになる見通しで、今夏にも同館で展示する予定。