令和の幕開け 紀伊万葉ネットワークの思い

万葉集に詠まれた地、和歌の浦の奠供山を背に紀伊万葉ネットワークの皆さん(県公館で)

新しい時代が幕を開けた。価値観が多様化し、めまぐるしく変化する社会状況で、まだ見ぬ「令和」は、どんな時代になるのか。古代から受け継がれる日本人の心を伝えようと取り組む人、伝統を守り、継承するために国際的な感覚で発信する若き経営者、ユニークな発想と抜群の時代感覚で、新境地を開拓する若者たち――。新時代への希望と期待を込めて、令和の和歌山を築き、彩っていく皆さんを紹介する。

新元号「令和」の典拠となり、注目される日本最古の歌集『万葉集』。自然の美しさを愛で、人を恋しく思う気持ちは、万葉の時代も今も変わらない。和歌山県内で詠まれた万葉集の歌の魅力を、より多くの人に伝えようと活動する紀伊万葉ネットワークの代表、村瀬憲夫さん(72=近畿大学名誉教授)は「現代を生きる私たちの心にも響く歌ばかり。万葉集の素晴らしさを皆さんと共有できれば」と話す。

同会によると、県内で詠まれた歌は102首あるといい、「新しい時代をきっかけに、これまで顧みられなかった万葉集の価値が見直されるのは、喜ばしいこと」と歓迎。

紀伊万葉には、大和の都から紀伊国へ旅した万葉人の万感の思いがあふれている。季節や自然、愛や恋、旅を題材にしたものなど実に多彩。村瀬さんは、その魅力を「素朴で大らか。技巧がなく、心情を素直に詠んだ歌が多い。そのぶん心に訴えてくるものがある」とする。

紀伊万葉歌で、村瀬さんが特に心引かれるのは、藤原卿が詠んだ「紀伊国の 雑賀の浦に 出で見れば 海人の燈火 波の間ゆ見ゆ」(紀の国の雑賀の浦に出て見ると、漁師の燈火が波間ごしに見えることだ)。権力闘争の中にあっても、花鳥風月を詠むことで、心ひそまる部分があったのではと推し量る。

同会の副会長の一人、馬場吉久さん(67)は「難しそうに思えるかもしれませんが、詠み込まれているのは草花なども多く、私たちの身近なもの」と話す。「万葉集に親しんで自然をよく観察するようになり、四季の変化にも敏感になりました。何より、万葉歌を朗唱すると気分が良くなりますよ」。

また、事務局長の木綿良介さん(71)は「万葉集には自然を愛し、楽しむ優しい心が詰まっている。若い世代にも、万葉集に興味を持ってもらいたい」と話す。

1300年も前から読み継がれてきた万葉集は、その時代の人々の心を映し出す鏡のようなものだという。迎えた新たな時代に、村瀬さんは「白梅に色をつけていくように、私たちの生き方、時代も、どういうもので彩っていくかが大切ではないでしょうか」と話している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。