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バリアフリー海から発信 双子アンバサダー活躍

公開日 2019.08.26

和歌山県和歌山市今福の双子の兄妹、髙田英樹さん(23)、友紀子さん(23)がこの夏、県サーフィン連盟、和歌山ライフセービングクラブのアンバサダーに就任し、同市の磯の浦海水浴場で安全啓発のアナウンス放送などを担当している。車いすを利用する2人は昨年、障害のある人も海を楽しめるよう企画されたイベントで、水陸両用車いすで初の海水浴を体験。身体的なハンディのあるなしにかかわらず、バリアフリーで誰もが安全に海水浴を楽しんでほしいと海からメッセージを伝えている。

8月中旬、大勢の海水浴客やサーファーたちでにぎわう海水浴場。両団体のメンバーらの介助を得て、1年ぶりに海に入った2人は「最高に気持ちいい」と笑顔がはじけた。前回よりも波は高く、幾度となく寄せる大きな波に身を任せ、夏の海を満喫した。

友紀子さんは、海水浴の体験をもとにした絵本『はじめてのうみ』を出版し、児童文学作家としてデビュー。読み聞かせの「おはなし会」にも力を入れる。英樹さんも和歌山大学と協力し電動車いすの国際的な競技会に参加するなど、何事にも意欲的な2人に、両団体が依頼した。

誰もが安全で快適に楽しめる海の魅力を発信することを任務に、任期は設けない。友紀子さんは主に7月から8月の土日に活動。海水浴場を一望できる事務所で、同海水浴場を管理・運営するマリンパーク磯の浦のスタッフと共に双眼鏡をのぞきながら、サーフィンと遊泳者のエリアが分かれていることなどをアナウンスする。

放送を通じて、おっとりした友紀子さんの呼び掛けが海水浴場の雰囲気を和ませることも。和歌山ライフセービングクラブの百合川壮事務局長(61)は「呼び掛けも上手。若い2人が海の活動に加わることで、一般の人にもライフセービングを身近に感じてもらえるとうれしい」と話す。

友紀子さんは「潮風の心地良さや大小の波など、海を体験したからこそ自分の言葉で伝えられることがある。皆さんが楽しく安全に過ごせるよう見守り、何か役に立てれば」とにっこり。

この日、英樹さんはサーフィンのボードにうつぶせになり、再び海へ。波を全身で受けて海を楽しみ「1人では諦めていたことも、皆さんに助けてもらって体験できた。たとえ障害があっても、楽しむ気持ちはみんな同じ。最高の海の楽しみ方を提供したいし、共感してもらえる人を増やしたい」と話している。

2人をサポートする県サーフィン連盟の梅本利樹会長(58)は「海ではサーファー同士のトラブルも多いが、互いを思いやる優しい気持ちが大切」と話す。「誰しも、人の支えがないと生きてはいけないという、忘れがちなことを教わる。2人が感じた海の素晴らしさを発信してもらえれば」と期待を寄せている。