琴ノ浦温山荘園トンネル 6年ぶりに再開通

アーチ型の園内トンネル入り口

和歌山県海南市船尾の琴ノ浦温山荘園(田中紀生園長)は、園内のトンネルの補強工事を終え、2013年4月の通行止め以来、6年ぶりに再開通させた。トンネルは通り抜けると浜辺へ出ることができ、その景観美で長く市民に愛されてきた。補修工事をした、同施設の保存活用を目指す「公益財団法人琴ノ浦温山荘園」では、トンネルの向こう側に広がる岩場の自然美を体感してほしいと願っている。

トンネルは、庭園の南西に位置する標高約33・8㍍の矢ノ島に1915年に開削され、長さは約37・7㍍。入り口はアーチ型に石積みをした造りで、内部は手掘りの跡をそのまま残した部分と、セメントと青石の極小片を混ぜて化粧を施した部分があり、高い左官技術で仕上げられている。

出口の先は、建築主でニッタ㈱(大阪市)の創業者、新田長次郎氏(1857―1936)のプライベートビーチのような空間で、子どもの遊び場に適した岩場や浜辺が広がっている。

同施設は長次郎氏の「大庭園を私有することなく、財団法人の経営に移管して、公共の庭園および遊園として開放すること」との遺言通り、県内外から多数の来訪者のある名所となり、昭和30年代に浜辺で遊ぶ子どもの写真が『海南・有田今昔写真帖』に残されている。

通行止めは、トンネルの天井から落石物があったことがきっかけ。同財団によると、補修工事を行う際、同施設が98年に国の登録有形文化財になっていることから、安全性の確保とともに景観の保全が重要で、修理方針の確立から着工、竣工に至るまで約6年を要したという。

災害科学、トンネ工学などの専門家らが検討を行い、現在のトンネルは、崩落の危険性の見られる所はセメントで固めているが部分的には「支保工」という岩盤が崩れないように支える仮設構造物で補強し、貴重な手掘りの跡や岩盤を観察できるようになっている。

トンネルは、絶えず吹き込む気持ちの良い海風と園内から直接浜辺へ出られることから市民に人気の高い場所で、再開通を望む声が多く寄せられていた。

田中園長は「日本庭園の中に浜辺へ出られるトンネルがあるというインパクトは、皆さんにとって忘れられない思い出になると思います」と多くの来場を呼び掛けている。

同施設は午前9時から午後5時まで。

月曜休園だが祝日は開園し翌日が休み。

問い合わせは同施設(℡073・482・0201)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。