山田洋次監督が来和 寅さん50作目先行上映で

山田監督を囲み、高校生たち

無頼者だが、時折語る人生哲学が多くを魅了する「寅さん」を主人公に、互いを支え合う庶民の暮らしを描いた人気映画シリーズ『男はつらいよ』の50作目が完成。12月27日からの全国公開を前に23日、和歌山県和歌山市のジストシネマ和歌山で先行上映会が開かれた。山田洋次監督(88)も登壇し、会場の高校生と対話。「機械化で人のふれ合いの少なくなった現代社会はわれわれが本当に求めていたものだったのかと、私は考えている」と次世代へメッセージを贈った。

先行上映会は10月28日の東京国際映画祭を皮切りに宮崎県や大阪府、福島県など全国7カ所で行われ、和歌山は「わかやま寅さん会」(西本三平会長)の尽力で実現。2回にわたる上映会で高校生70人を含む約800人が、第1作公開から50周年を記念し「お帰り寅さん」として制作された50作目を鑑賞した。

同作品は国民的な人気を集めたシリーズ映画。「寅さん」こと、寅次郎を演じる渥美清さんが1996年に亡くなるまで特別編を含む49作が作られ、今作もおなじみの倍賞千恵子、吉岡秀隆、前田吟、浅丘ルリ子らが登場。渥美の軽やかな演技は、4Kデジタル修復された映像で再び楽しめる。

ストーリーは、大人になっても思い悩む日々を送る寅さんの甥で小説家の満男が、法事をきっかけに母のさくらや父の博、寅さんのかつての恋人リリーらと再会。寅次郎との騒々しく楽しかった思い出話に花を咲かせるうち、心が安らいでいくというもの。  上映後の舞台あいさつで山田監督は「劇中の回想シーンで、若い頃を役者本人が演じている作品は珍しい。そこが私の自慢です」と笑顔。和歌山市出身で、第37作から制作に参加している照明技師の土山正人さんも登壇し「監督の目指す絵のじゃまをしてはいけないとの思いで仕事をしている」などと話した。

さらに山田監督は高校生と熱心に意見を交わし、県立和歌山工業高校の福竹良太朗君(17)が「僕も寅さんのように愛される人になりたいです」と話すと「それはまずいんじゃないの?」と応じて会場を沸かせた。

「騒動を起こし周囲を困らせる寅さんを、なぜ家族が許し観客は愛するのか、そこが問題だよね」と問い掛け「『風変わりなおじさん』を大目にみることができる寛容の心が、社会には大切だと思う。君たちも寅さんに近い存在を見つけ、多様性のある価値観にふれてほしい」と力を込めた。

上映会の後、福竹君は「緊張したけど正直な感想を伝えられました。僕の考えにもしっかりと対応してくれてうれしかったです」と笑顔だった。山田監督と約30年の親交のある西本会長(71)は「最新作を見て社会の移り変わりの大きさに涙した。今後も『男はつらいよ』シリーズの上映会や、暮らしを支え合うまちづくりをしていきたい」と話していた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。